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高熱隧道

高熱隧道(こうねつずいどう)

著者:吉村 昭 発行所:新潮社

有名な映画「黒部の太陽」は、戦後の黒四ダム工事の話ですが、この小説は、

昭和11年着工、昭和15年完工の黒部第三発電所の物語である。犠牲者300名

を超えるこの難工事は、昭和12年支那事変より16年の太平洋戦争を背景に、

軍需工業力強化の必要性上、国家プロジェクトに近い工事であった。

第一から第三までの工区に分けて落札されたが、最上流のもっとも長い第一

工区では、温泉湧出地帯に突き当り、岩盤温度が掘削する度に上り続ける現象

が起き、落札した加瀬組が工事放棄してしまった。第一工区では、30メートル

も進めば、摂氏65度の熱い岩盤に突き当り、進めば進むほど温度が上昇する事

が予想される難工事であった。ついには、100度を超えるの中での超過酷なトン

ネル工事となった。ダイナマイト使用制限温度は40度、ついに自然発火の惨事

が起こった。立ち会っていた8人の人夫の命が散った。

そして、続いて泡雪崩(大型台風の約15倍もの爆風)により84名が宿舎ごと

吹き飛ばされる大惨事まで起こった。何度も工事中止の状況に追い込まれていく。

ついには、摂氏165度というとんでもない温度にまで上昇してしまう。

しかし、技術者たちは、この大自然の猛威の中、トンネル貫通に賭ける情熱と

執念で果敢に立ち向かってゆく。☆☆☆☆☆

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羆嵐

羆嵐(くまあらし)

著者:吉村 昭 発行所 新潮社

時は、大正4年12月、日本獣害史上最大の惨事が起こった。

北海道天塩山麓の開拓村を突如、巨大な羆(ひぐま)が襲い、2日間で六人を

食い殺す事件が起こった。内地からこの北海道に移り住んだ住民を戦慄させ

たこの事件、内地の熊は、木の実などの植物を常食として、最大でも110キロ

ほど、しかし、この北海道に生息する羆は、最大の物で300キロを超え、牛や

馬の頸骨を一撃で叩き折り、内臓や骨まで食べつくす。日本最凶の肉食獣である。

急報を聞きつけ、警察の分署長を指揮者に、他地区からの救援隊も加え約150名

が駆け付けた。銃携行者も30名を超えていたが、それは単なる烏合の衆に過ぎ

なかった。通称銀オヤジ、鬼鹿村に住む羆専門の猟師山岡銀四郎。

年に2.3頭は必ず羆を仕とめる猛者であるが、素行が悪く、嫌われ者であった。

区長は、どう見てもこの150名では、あの羆を殺すことはおぼつかないと、

密かに銀四郎に使者を送ったのである。

そして銀オヤジと荒れ狂う383キロの羆との駆け引きが始まった。☆☆☆☆

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この地で7才で、事件に遭遇した大川春義氏は、これを契機に羆撃ちになった。

大川氏は、犠牲者1人につき、10頭の羆に復讐すると誓いをたて、ほとんど1人

で山に入った。そして引退するまでに102頭の羆を仕とめた。

水滸伝十九

水滸伝 十九 旌旗の章   別巻 替天行道  

    (最終巻) 

著者:北方 謙三 発行所:集英社

林冲の死により、すぐに軍議が招集された。隊長林冲は死んだが、梁山泊最強の黒騎馬隊は残った。

史進の赤騎馬隊に編入するのか、索超を上げるのか。しかし、この二人を持ってしても黒騎馬隊を

扱うことは難しい。冷静な目を持ち、宋軍にいたならば、童貫の副官になったであろう呼延灼が最後

に発言した。林冲騎馬隊は、楊令が指揮をとる!と。

楊令は、楊の旗を揚げずに林の旗を揚げた。狙いは童貫の首、ただひとつ。

童貫軍8万と梁山泊5万、ともに総力をあげた最後の戦いが始まった。


結末は周知の通り、梁山泊は敗れますが、あえて誰が死に誰が生き残るのかは書きません。

まさに、北方大水滸伝怒涛の完結編でした。拍手!!! ☆☆☆☆☆

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最後に、梁山泊の旗「替天行道」(たいてんぎょうどう)の題名がついた別巻より

1101年時点(人によっては登場年度) 物語を思い出しながら記します。

(フォントない分はご容赦ください)

宋江36歳・晁蓋34歳・盧俊義40歳・呉用39歳・公孫勝30歳

関勝36歳・林冲29歳・秦明47歳・呼延灼35歳・花栄31歳

柴進34歳・李応38歳・朱仝28歳・魯智深35歳・武松27歳

董平28歳・張清28歳・楊志28歳・徐寧39歳・索超27歳

戴宗34歳・劉唐26歳・李逵24歳・史進19歳・穆弘28歳

雷横29歳・李俊29歳・阮小二27歳・張横30歳・阮小五25歳

張順28歳・阮小七23歳・楊雄26歳・石秀25歳・解珍52歳

解宝26歳・燕青22歳・朱武32歳・黄信29歳・孫立32歳

宣賛32歳・かく思文42歳・韓滔43歳・彭き42歳・単廷珪28歳

魏帝国26歳・蕭譲48歳・裴宣28歳・欧鵬23歳・ケ飛25歳

燕順38歳・楊林24歳・凌振39歳・蒋敬26歳・呂方20歳

郭盛19歳・安道全31歳・皇甫端52歳・王英26歳・こ三娘19歳

鮑旭23歳・樊瑞32歳・孔明26歳・孔亮24歳・項充28歳

李袞27歳・金大堅42歳・馬麟26歳・童威24歳・童猛24歳

孟康24歳・侯健36歳・陳達26歳・楊春25歳・鄭天寿25歳

陶宗旺22歳・宋清34歳・楽和28歳・きょう旺26歳・丁得孫37歳

穆春25歳・曹正29歳・宋万32歳・杜遷40歳・薛永26歳

施恩22歳・李忠36歳・周通29歳・湯隆31歳・杜興48歳

鄒淵26歳・鄒潤24歳・朱貴43歳・朱富28歳・蔡福38歳

蔡慶36歳・李立26歳・李雲36歳・焦挺24歳・石勇26歳

孫新28歳・顧大嫂27歳・張青38歳・孫二娘36歳・王定六26歳

郁保四26歳・白勝23歳・時遷44歳・段景住26歳・そして楊令17歳

水滸伝十八

水滸伝 十八 乾坤の章  

著者:北方 謙三 発行所:集英社

満を持して童貫軍5万が動くと同時に、巨大船20艘が、五丈河に入ったという情報が梁山泊に伝わった。

童貫の指示で作らせた、海鰍船(かいしゅうせん)と呼ばれる巨大船は、実に500名もの兵を乗せられる。

梁山泊の海軍は、呉用の許可なく潜りの達人張順らが、夜中に調べに行った。すると、様々な工夫を凝ら

したこの巨大船の実態が見えてきた。そんな中、亡き青面獣・楊志の養子である楊令が、王進の子午山か

ら離れ、梁山泊に姿を見せる。秦明を総隊長として籠る二竜山に時をかけて着々と攻城用の寨を築く趙安。

一年以上もにらみ合いが続いて、ついに秦明が動いた。三万の趙安もすかさず反撃に出る。激しい激突が

繰り返されたが、圧倒的な兵力で勝る趙安軍が、ついに二竜山に雪崩れこんできた。孤軍奮闘する秦明に、

趙安は降伏を勧める。血の一滴が残っているかぎり、闘い続けるのが軍人だ、と言い残して秦明も散って

行った。二竜山を破壊した趙安軍が童貫の本隊に加わり、精鋭8万となり、ついに梁山泊本隊との最終決戦

に入った。緒戦に、攪乱する扈三娘の一千騎が、副官豊美軍の計略にかかり、完全に包囲されてしまう。

名馬・百里風に乗って救援に駆け付ける林冲、豊の旗に一直線に突っ込む、すかさず豊美の首を飛ばす。

しかし、大将を失っても崩れないのが、精鋭の童貫軍である。扈三娘を何とか逃がすが、もう1万人が林冲

の眼前にいる。ためらわず、百里風と突っ込む林冲。

水滸伝の主人公的存在であった林冲の最後であった。☆☆☆☆☆

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童貫(どうかん)・・・禁軍元帥。元宦官。

豊美(ほうび)・・・童貫の副官。

王進(おうしん)・・・元禁軍最強の武術師範。母と子午山に隠棲。

秦明(しんめい)・・・二竜山総隊長。元青州将軍。

趙安(ちょうあん)・・・童貫子飼いの将軍。

扈三娘(こさんじょう)・・・二振りの剣を遣う美女隊長。

林冲(りんちゅう)・・・豹子頭林冲、騎馬隊総隊長。

水滸伝十七

水滸伝 十七 朱雀の章  

著者:北方 謙三 発行所:集英社

ついに、最大の強敵・童貫が動き出した。

宋軍大黒柱・童貫が、梁山泊軍に対し相手にとって不足なしと認めた行動である。

童貫軍1万5千、部下の豊美(本来は豊におおざと)に本隊の指揮を任せ、董平の

守る双頭山に向かってきた。董平も自ら先頭に立ち奮戦するが、これまでの宋軍

と違い素晴らしく調練された最強部隊である。またたくまに董平が殺されて双頭

山は落とされてしまう。そして、五万の童貫軍と梁山泊全軍の激突が始まった。

呼延灼、関勝、林冲、張清、解宝、宣賛、史進、索超、誰もが童貫軍の真の強さ

に押されまくった。関勝が死に、名だたる将校も次々と命を落とす中、張清の飛礫

により負傷した童貫を守るため撤収して行き、なんとか停戦に持ち込むことができた。

そんな中、青蓮寺の高廉率いる闇軍と公孫勝率いる致死軍も今までにない大ががり

な死闘が繰り広げられた。そして、子午山で養生していた梁山泊の生え抜き魯達が、

凄まじい自害を遂げる。まさに最終決戦の火蓋が落とされた17巻。☆☆☆☆☆

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童貫(どうかん)・・・禁軍元帥。元宦官。

豊美(ほうび)・・・童貫の副官。

董平(とうへい)・・・梁山泊の双頭山の総隊長。

呼延灼(こえんしゃく)・・・代州将軍から梁山泊本隊総隊長へ。

関勝(かんしょう)・・・雄州将軍から梁山泊本隊総隊長へ。

林冲(りんちゅう)・・・元禁軍で梁山泊騎馬隊総隊長。

張清(ちょうせい)・・・元遼州の傭兵隊長から梁山泊本隊総隊長へ。

解宝(かいほう)・・・解珍の息子。重装備部隊隊長。

宣賛(せんさん)・・・元関勝の軍師より、全体の実戦軍師へ。

史進(ししん)・・・九紋竜史進。九竜寨の遊撃隊長。

索超(さくちょう)・・・騎馬隊隊長。

高廉(こうれん)・・・青蓮寺の諜報組織の隊長。

公孫勝(こうそんしょう)・・・梁山泊諜報組織・致死軍総隊長。

破獄

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 破獄

 著者:吉村 昭 発行所:新潮社

 昭和の脱獄王の異名を持った白鳥由栄をモデルに書かれた小説。

 緒方拳主演でテレビドラマ化もされている。1日に120`を走り、手錠の鎖を引きちぎり、

 40歳過ぎても米俵を持って腕を水平にしていられる。また頭だけ抜けられれば、全身の

 関節を脱臼させて抜けられる特殊な能力を持っていた。まるでバットマンやスーパーマン

 の悪役に出てきそうなすごい人間である。明治40年青森で生まれて、28歳で収監、以来

 4度も脱獄したこの白鳥を佐久間という主人公に置き換えて小説は始まる。圧巻は、脱獄

 不可能と言われていた網走刑務所を脱獄した手口である。毎日、特製手錠のナットと視察

 窓の鉄棒のネジに味噌汁をたらして腐食させ、はずすことに成功して、その上で自分に対

 して最も厳しく扱う看守の当直日に決行している。佐久間は、獄舎を出てから外塀を越え

 るまで最短の時間と方法をとっている。独房に入り続けた佐久間が、刑務所内の地理をな

 ぜこれほどまでに熟知しているのか、関係者の頭を悩ませた。それは、空襲を仮定した退

 避訓練に参加したわずかな機会に、建物、塀の高さや位置関係、距離、立哨所などを頭に

 きざみこんだからだとわかり、そんな佐久間の記憶力、また緻密な計画性と行動力は、驚

 愕に値すると改めて思い知らされることとなる。もし、この能力を他に使っていたなら、

 すごい偉業を成し遂げたかも知れない。

 4度も脱獄した佐久間の処遇に頭を悩ませる占領軍のオックスフォード大尉は、自分の管轄

 外への移送を決める。そして、札幌刑務所から東京の府中刑務所へ護送するために、米軍専

 用の貨車を使用する超厳戒態勢が取られた。府中刑務所長鈴江は、佐久間を徹底的に調べ上

 げ、5度目の脱獄を防ぐにはどうすればよいか、何日も熟考を重ね、大胆なあつかいに心がけ、

 一人の囚人として特別扱いせずに接していった。反抗的だった佐久間も徐々に表情の変化が見

 られ、また炊場での力仕事に従事させることにより、仲間とも打ち解ける環境を作っていった。

 そして28歳から収監、4度の脱獄を経て、模範囚として54歳で仮出所となった。

 日雇い労務者として過ごし、71歳でこの世を去った。☆☆☆☆

漂流

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 漂流

 著者:吉村 昭 発行所:新潮社

 天明2年から4年にかけて異常気象が続き、おまけに大暴風雨襲来により、耕作物も大被害を受けた。

 そして、翌5年、1785年江戸時代後期の土佐ノ国から物語は始まる。土佐藩では、前年までの飢饉に

 より餓死者も出て、特に被害のひどい村に救済のため米を送ることになった。その米を運ぶべく駆り

 出されたのが、主人公の長平24歳、同じ歳の幼馴染の音吉、水主頭の源右衛門、炊事係の甚兵衛、船

 主と船頭を兼ねた儀七の5人が乗った三百石船の弁材船であった。米をおろし、儀七だけは陸路で帰る

 ことになり、残り4人で赤岡へ帰ることとなった。しかし、安芸の沖合いに差し掛かった頃、強烈な

 北西風に煽られて、どんどんと流され、また大しけにもなり、次々と船も壊れていき、最後は転覆を免

 れて帆柱を切り倒すことになった。生死をさまよい続けて、彼らは無人島にたどり着く。

   今の鳥島である。

 もちろん彼らはそこがどこかも知るよしもない。そこは、湧き水もなく、緑もない絶海の孤島であった。

 近くを通る船影も見えない唯一あほう鳥が、秋から春までヒナをかえすだけの場所であった。栄養失調で

 次々と死んでいく中、なんとあほう鳥を主食にした長平だけが生き残り12年に及ぶ苦闘の末に、ついに

 生還する壮絶なサバイバル物語である。☆☆☆☆☆

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                 鳥島とあほう鳥

水滸伝十四・十五・十六

水滸伝 十四 爪牙の章 十五 折戟の章 十六 馳驟の章

著者:北方 謙三 発行所:集英社

爪牙(そうが)つめときば。転じて人を傷つけ、また脅かすもの。

折戟(せつげき)戟も折れるほどの激しい戦。

馳驟(ちしゅう)馬や馬車で駆け回ること。


約一年以上、大きなぶつかり合いがないまま時が過ぎていた。しかし、青連寺は着々と次なる大戦に

備えていたのであった。ついに、官は、禁軍、地方軍、水軍合わせて20万の大軍勢で梁山泊殲滅に

動き出した。この大軍勢を動かすために、李富や聞煥章は、綿密な兵站計画を立てていたのであった。

そして、ついに各寨に圧倒的軍事力で勝る官軍の一斉攻撃が始まった。どの寨が崩れても壊滅する

梁山泊の必死の防戦の中、一番の激しい攻防が、花栄が守る流花寨であった。二つ月何とか持ちこた

えてきたが、ついに第一の防壁が破られた。総隊長の花栄は、前線に出て、特別な矢を射る。常人では

届かない距離だが、花栄は無造作に射る。狙った男はしばらく立っていたが、棒のように倒れた。

二人目、三人目と全部胸の真ん中を射抜く。敵の前線が下がる。戦場が静まり返り、しばらくして味方から

歓声があがる。後退した官軍は、盾を出し再び前進する。また花栄は弓を絞る。連射して、盾ごと10人を

射倒す離れ業を見せつけた。

しかし、戦況はどの寨も梁山泊が圧倒的に押されていた。呉用から実戦の軍師を引き継いだ宣賛は、

起死回生の策を考えだして、北京大名府にある奇策を持ちうる。宣賛の奇策により何とか停戦に持ち込ん

梁山泊。しかし、裏ではあの晁蓋を暗殺した史文恭が、商人になりすまし梁山泊に近ずいていた。

そして、初期から梁山泊を経済面で支えた柴進が、史文恭の毒牙に倒れる。闇の組織:致死軍の

総帥公孫勝は、大胆にも青蓮寺への奇襲を敢行する。約250人で敵の諜報機関の本山に突っ込んだ

致死軍は、ついに青蓮寺の総帥である袁明の暗殺に成功する。☆☆☆☆☆


李富(りふ)・・・青蓮寺の反乱軍担当で梁山泊壊滅に執念を燃やす切れ者

聞煥章(ぶんかんしょう)・・・青蓮寺の調略担当、李富と動く切れ者。

花栄(かえい)・・・流花寨の総隊長。元青州軍で弓の名手。

呉用(ごよう)・・・実戦にはでない軍師。元私塾教師。

宣賛(せんさん)・・・元関勝の軍師。別名醜郡馬。

晁蓋(ちょうがい)・・・宋江と並ぶ梁山泊の頭領。

史文恭(しぶんきょう)・・・聞煥章が送り込んだ老刺客。

柴進(さいしん)・・・兵站を担当。滄州の名家出身。

公孫勝(こうそんしょう)・・・非情な致死軍総隊長。

袁明(えんめい)・・・青蓮寺の総帥で、作戦立案者


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水滸伝 十二・十三

水滸伝 十二 炳乎の章 十三 白虎の章 

著者:北方 謙三 発行所:集英社

 

代州将軍呼延灼の秘策・連環馬で、初めて梁山泊軍は大敗する。しかし、呼延灼の不在時

に高きゅうが勝手に追撃戦を仕掛け、梁山泊軍に敗れる。

平原の城郭(まち)を落として、何十人かの住民を軍に加える晁蓋。しかし、その中に、刺客・

史文恭が入り込んでいた。そして、ついに史文恭の毒矢に射られて晁蓋は絶命する。宋江と

並ぶリーダーを失った梁山泊は、悲しみに打ちひしがれていた。そんな中、梁山泊を経済面

で支えていた闇塩の元締め盧俊義(ろしゅんぎ)もが、青蓮寺に捕縛されてしまう。晁蓋の暗

殺、盧俊義の捕縛と続き、梁山泊に激震が走った。過酷な拷問を受け続ける盧俊義を救うべ

く、燕青は飛竜軍と救出に向かった。圧倒的な軍容を誇る官軍の動きが格段に改善された。

しかし、梁山泊も代州将軍呼延灼、雄州将軍関勝の優秀な人材が官軍を離脱して梁山泊軍

に加わった。梁山泊の前進基地である流花寨に超安の三万が押し寄せた。その後方には、

宿元景の三万が控える。都合六万の大軍団、おまけに北京大名府の二万も動く、梁山泊は、

総動員して対処に追われる。しかし、官軍の本当の狙いは別にあった。☆☆☆☆☆

 

炳乎(へいこ)・・・きわめて明らかなさま、また、光り輝くさま

呼延灼(こえんしゃく)・・・代州将軍から梁山泊本隊総隊長へ

晁蓋(ちょうがい)・・・宋江と並ぶ梁山泊の頭領

高きゅう(こうきゅう)・・・人偏に求だが、フォントが入ってません

           禁軍将軍、帝のお気に入り。

盧俊義(ろしゅうぎ)・・・大商人で、梁山泊の財源である闇塩の元締め

燕青(えいせい)・・・盧俊義の従者で体術の達人。幼い頃に盧俊義に拾われる

超安(ちょうあん)・・・禁軍将軍で童貫元帥の子飼い

宿元景(しゅくげんけい)・・・禁軍将軍

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水滸伝 十・十一

 水滸伝 十  濁流の章   十一 天地の章 

 著者:北方 謙三 発行所:集英社

 

数十万あるいは百万の官軍が、2万に満たない梁山泊軍に負け続けている事に

苛立ちを隠せない禁軍元帥の童貫。地方軍の切り札・呼延灼将軍に出撃命令を

下す童貫元帥。一度だけなら必ず勝てると宣言して、呼延灼はある秘策を持ち南

下する。梁山泊は、晁蓋自ら総大将となり迎え討つ。それまで、何倍の官軍にも

勝ち続けた梁山泊は、同人数での戦いで、初めて呼延灼の秘策に遭い大敗する。

しかし、呼延灼が留守にしている間に、高きゅうが手柄を焦り、呼延灼は窮地に陥る。

死を覚悟に晁蓋に面会を求める呼延灼。

そこで、梁山泊の志に触れ、呼延灼は梁山泊軍に加わることになる。

しかし、青蓮寺は恐るべき刺客・史文恭を潜入させていた。☆☆☆☆☆

 

 童貫(どうかん)・・・元宦官の禁軍元帥

 呼延灼(こえんしゃく)・・・代州将軍から梁山泊本隊総隊長へ

 晁蓋(ちょうがい)・・・宋江と並ぶ梁山泊の頭領

 高きゅう(こうきゅう)・・・人偏に求だが、フォントが入ってません。             

                    禁軍将軍、帝のお気に入り。


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水滸伝 七・八・九

 

水滸伝 七 烈火の章  八 青龍の章  九 嵐翠の章

 著者:北方 謙三 発行所:集英社


官軍の包囲網が狭まり、宋江は、太原府の山中の洞窟に避難する。

武松、李逵、欧鵬、陶宋旺の従者4人を連れた、たったの5人である。

1万数千の官軍が包囲する。もともとは、石切り職人の李逵が、石を

削りだし、陶宋旺が、石積みの罠を何重にも仕掛けていく。

百人力の武松と李逵がいても、相手は1万人を超えている。山を崩す

様な石積みと朱仝と雷横の兵、林冲の騎馬隊が駆けつけ、またまた

宋江救援に成功する。しかし、宋江を逃がすために、獅子奮迅の活躍を

見せて雷横は討ち死にする。

その頃、魯智心改め魯達は、遼との国境付近の北におり、関勝、呼延灼

の2将軍を仲間に引き入れるべく説得に乗り出す。

聞煥章は、二竜山・双頭山と梁山泊の三角形の真ん中の祝家荘(独竜岡)に、

大量の官軍を忍ばせる。梁山泊の喉元にあたる祝家荘に官軍の拠点を

設けられる事は、梁山泊の敗退を意味する。

大がかりな罠が張られているのを知りつつ、宋江を大将に5000の兵で攻める。

堅固な守りと様々な罠により、梁山泊軍の戦死者は日増しに増えてゆく。

焦る軍師呉用、もはや内からの反乱しか切り崩せない状態である。李家荘の李応

の反乱、解珍、解宝らが呼応して、多大な犠牲を払いながらもなんとか祝家荘を

崩壊させる。しかし、この勝利の目前、青蓮寺の李富の策謀にはまり、

林冲は単独で軍を抜けてしまう。☆☆☆☆☆

 

宋江(そうこう)・・・梁山泊の頭領

武松(ぶしょう)、李逵(りき)・・・宋江の従者

陶宋旺(とうそうおう)・・・百姓だが、宋江の従者に、石積みの名人

朱仝(しゅどう)、雷横(らいおう)・・・元軍人、双頭山の総隊長

聞煥章(ぶんかんしょう)・・・禁軍の参謀で冷徹な切れ者

李応(りおう)・・・李家荘の保正だが、反乱して梁山泊へ

解珍(かいちん)・・・25年間、祝家荘にだまされて猟師生活を送る

解宝(かいほう)・・・独竜岡の猟師、解珍の息子

李富(りふ)・・・青蓮寺の反乱担当、聞煥章と並ぶ切れ者

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水滸伝四・五・六

水滸伝 四 道蛇の章  五 玄武の章 六 風塵の章

著者:北方 謙三 発行所:集英社

 

宋江の妾が殺され、疑いのかかった宋江は武松と逃亡する。愛娘を亡くして、悲嘆に暮れる馬桂。

青蓮寺は、この馬桂に近ずき、巧妙な罠を仕掛け密偵に仕立て上げてゆく。宋江は、旅の途中で

母親と逃げる李逵(りき)と出会う。石切り職人の怪力李逵は、宋江に惹かれていくが、一人にした

母親は、虎に食い殺されてしまう。拳で、石を叩き割り、巨木をも折ってしまう武松(ぶしょう)と黒旋

風の李逵の二人は、怒りで二頭の虎退治をしてしまう。宋江は、旅の途中で、穆弘(ぼくこう)、穆春

(ぼくしゅん)、李俊ら掲陽鎮(けいようちん)の顔役たちを仲間に引き入れる事に成功する。しかし、

江州にたどりついた宋江は、ついに二万の官軍に包囲されてしまう。穆弘・穆春・李俊や李逵、武松、

また林冲の精鋭騎馬隊らの活躍により、なんとか逃げ延びた宋江。しかし、梁山泊に次ぐ拠点の

二竜山・桃花山の総大将楊志暗殺計画は、馬桂が密偵となり着々と進行していた。青蓮寺の影の集団、

王和軍。手練れ揃いのその集団から楊志一人に、なんと150人の暗殺集団を組織して取り囲む。

楊志は、愛刀吹毛剣でなんと100人を切り倒すが、妻とともに命尽きる。楊志の後継者として、官の不遇

の将軍・秦明(しんめい)に目を付けた梁山泊は、女真族の地からケ飛(とうひ)によって助け出された

魯達(魯智心から改名)が動き出した。そしてとうとう秦明を梁山泊に引き入れる事に成功する。

清風山だけが、二竜山、桃花山と離れた存在であったが、楊志の跡を引き継いだ秦明は、この三山の

三角形の位置関係に目をつける。そして官軍3万の大軍が逆賊秦明討伐に動く、しかし圧倒的多数の

官軍を翻弄して見事潰走させてしまう恐ろしき軍略の秦明。この敗北に強い危機感を感じた

蔡京(さいけい・官軍宋の宰相)は、切れ者聞煥章(ぶんかんしょう)を青蓮寺に送り込む。

☆☆☆☆☆


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水滸伝

 

水滸伝  一 曙光の章  二 替天の章  三 輪舞の章

著者:北方 謙三 発行所:集英社

 

日本では、平安末期から鎌倉の始めの12世紀、中国では、北宋末期。

著しく腐敗した政府を倒そうと漢たちが立ち上がった。

第九回司馬遼太郎賞受賞の世紀の傑作・北方水滸伝全十九巻の始まりである。

官軍・禁軍の武術師範代・林冲(りんちゅう)。賄賂が横行して、腐りきった国に不満を

抱えながらも、その官軍の師範代として仕える林冲。全国隅々まで行脚して同志を見分ける

旅を続ける魯智深(ろちしん)、別名・花和尚(かおしょう)。魯智深が、林冲の住む開封府に

立ち寄る度に、酒を酌み交わし情報交換する仲であった。しかし、不満分子がくすぶっている

事に危機感を持った禁軍の上層部の罠にはまり、林冲は囚われの身となってしまう。

梁山湖に浮かぶ天然の要塞には、すでに王倫を頭領とする盗賊が5000人で籠っていた。

反乱軍のリーダー、宋江(そうこう)と晁蓋(ちゅうがい)は、この天然の要塞を手に入れるべく、

脱獄した林冲と医者の安道全をこの要塞に送り込んだ。

林冲の働きにより、内からのクーデターに成功して、晁蓋ら幹部7人が梁山湖に浮かぶ

山寨(さんさい・・・山の砦)に入山、ついに「替天行動」の旗を揚げた。

官軍にいた楊志も、あまりにひどい政府を見限り、盗賊の根城・二竜山を魯智深となんと

二人で乗っ取ってしまう。国を動かす影の組織・青蓮寺は、この情勢に危機感を感じ、

梁山泊の財源を探ろうと画策する。☆☆☆☆☆

 

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戯史三國志・我が土は何を育む

 

戯史三國志 我が土は何を育む

著者:吉川 永青 発行所:講談社

 

やはり、関羽や張飛、諸葛亮が出てくるとおもしろい。

黄巾の子として生まれ、9歳で曹操の大軍から逃れ、命尽き果てる寸前に、若き劉備に拾われる。

その拾われた子、名前を廖淳(りょうじゅん)、戯史三国志第3弾の主人公は、その廖淳である。

曹操の参謀陳宮、呉の都督程普、そして蜀の将軍廖淳である。

少年廖淳を毎日スパルタ稽古する張飛や関羽。やがて立派な青年に成長する。廖淳は、劉備に

従い荊州・襄陽の西二十里の山裾の小さな里に馬を進めていた。二度の訪問は、関羽と張飛が供

をしたが、二度とも留守で、三度目の今回は、関羽も張飛も渋ったため、お鉢が24歳の廖淳にまわってきた。

世にいう三顧の礼である。人物鑑定でも名高い司馬徽(しばき)、その司馬徽に師事して学問を積ん

だ諸葛亮、字は孔明。圧倒的な頭脳の持ち主諸葛亮。しかし、また圧倒的に偏屈な男でもあった。

その時、孔明27歳。司馬徽にして、臥龍と評された孔明を得れば、天下は掌にありと言わしめた天才。

劉備の参謀となった孔明が、40代の関羽・張飛・劉備を駒のように使い蜀を建国してゆく。

☆☆☆☆☆

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戯史三國志・我が槍は覇道の翼

 

戯史三國志 我が槍は覇道の翼

著者:吉川 永青 発行者:講談社

程普、字は徳謀(とくぼう)、呉の基礎を築いた武将である。陳宮に続き、今回戯史三國志2巻は、

この程普が主人公である。州郡の役人から賊将となっており、そこで、太志を抱く孫堅と出会い、

孫堅の部下となる。しかし、幼い兄弟を残し、若くして戦死する孫堅。長男の孫策に従い、孫堅の

夢を息子の孫策に求める。孫策の代になると、有能な若き軍師・周瑜(しゅうゆ)が、孫家では、

めきめきと頭角を表すようになる。いつか程普は、この周瑜をねたみ、嫉妬と焦りの中で、本来の

大望を忘れがちになっていく。そんな時、またしても敵の毒矢に射られ、若き君主・孫策が没してし

まう。そして、後を継いだのが、弟である孫権である。16歳で跡を継いだ孫権は、内政に力を入れ、

ひたすら力を蓄えておくべきであると、外征を禁じた。そして、ますます巨大になっていく曹操軍が、

ついに80万の大軍で孫権打倒と南下を始めた。27歳になった孫権、大都督・周瑜、都督・程普は、

諸葛孔明と謀り、曹操の大軍を迎えうつのであった。有名な赤壁の戦いの火蓋がきられた。☆☆☆☆

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戯史三國志・我が糸は誰を操る

戯史三國志「我が糸は誰を操る」

著者:吉川 永青 発行所:講談社

 

西暦184年、太平道という新興宗教の教祖の張角が、腐敗している第14代皇帝・霊帝の漢王朝打倒

で旗揚げした黄巾の乱。この張角の挙兵に呼応した民衆は、黄色の布を巻いて役所を襲い、金持ちの

蔵を破り、略奪や暴行を繰り返した。そして、中国全土へと膨らんでいった黄巾の乱。その数50万。

官軍だけでは、黄巾賊討伐は不可能であると義勇軍を募集する。そして、黄巾賊討伐に立ち上がった

のが若き孫堅、曹操、劉備など、のちの三國時代の幕開けである。

戯史三国志とあるように、今までの三国志とは視点を変えて描かれている。主役は、陳宮。洛陽の

小役人であった若き陳宮の才能に惚れ込んで、臣になれ、と誘う曹操。物語はそこから始まる。

陳宮を参謀に迎え、どんどんと力をつけてゆく曹操。腐敗した漢王朝を倒し、新しい皇帝を創り、新しい世

の中を創るためには、おのれの操り人形としての主人の方が、野心を遂げやすい。しかし、曹操は切れ

過ぎる。武勇者が綺羅星のようにいるこの時代に、その武勇は、天下無双といわれた呂布。この男なら

操れると曹操を裏切り、呂布の参謀になり曹操を裏切る陳宮。そして手の内を知り尽くされた陳宮に何

度も煮え湯を飲まされる曹操。

そいてついに、呂布の本拠・徐州に大軍20万を率いて曹操が、最後の決戦に攻め込んだ。☆☆☆☆☆


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関羽を斬った男

関羽を斬った男

著者:吉川 永青 発行所:講談社

たまたま週刊新潮に紹介が載っていて、これはおもしろそうだと早速アマゾンで注文しました。はい、やはり

間違いなくおもしろい。どんどんと素晴らしい若い作家が出てくると楽しみが増えてありがたい事です。

また、副題が良い、「英雄のそばに、物語は落ちている」

山賊に身を落として娘を誘拐させる張飛、しかし、その娘に一目惚れして何でも言う事を聞いてしまう情けない

豪傑張飛。ところがその娘の従父が、なんと曹操の主将の夏侯淵であった。「天竺の甘露」

武勇に優れまた学問も修めた偉丈夫太史慈、26年の生涯を駆け抜けた英雄孫策、小覇王と謳われし孫策

その孫策と敵であったが、心酔して片腕となった太史慈。孫策の下で活躍する太史慈であったが、胃に瘤が

できてやせ細ってしまう、不思議な石を持って現れた仙人、半信半疑であったが、ことごとく予言を的中さす

仙人于吉と太史慈は・・・「瘤と仙人」

天下無双の大豪傑関羽を斬った男として一躍時の人となった孫軍の一兵卒であった馬忠。一騎打ちでもなん

でもなく、たまたま目をつぶって突進したら、何人もと戦っていた関羽の腕に槍が突き刺さった。大勢で取り押さ

えたが、一番槍として馬忠の名が広がった。怒り狂う劉備が全軍20万で攻め込まれたら大変とばかり、劉備の

矛先を魏に向かわせるため曹操に関羽の首を送る。しかし、曹操は関羽の武勇を慕い手厚く弔ってしまった。

そして、馬忠は、孫家から離れ身を隠せと言われ、人知れない田舎に身を隠す。しかし、あの

関羽を斬った男を殺して有名になろうとする輩が後を絶たない「関羽を斬った男」他四編。☆☆☆☆☆

9784062198325_l.jpgimagesEY9B5NGM.jpg三國無双より「関羽」

超高速!参勤交代

超高速!参勤交代

著者:土橋 章宏 発行所:講談社

本当におもしろいタイトルである。陸奥の湯長谷藩、現在の福島県いわき市、わずか1万5000石の小藩が、

5日以内に江戸へ参勤交代せよとの厳命を受ける。財政難の湯長谷藩には、費用も行列を組む人手もない。

しかし、これに逆らえばお家取潰しの憂き目に。心優しき藩主内藤政醇は、知恵者家老と武芸に秀でた家臣

数人と先導する東国一とうたわれた戸隠流の忍者雲隠段蔵とすぐさま出発するのであった。この知恵者家老

の相馬の妙案で、難所を次々に切り抜けていく痛快時代劇である。1969年生まれの著者の小説デビュー作でもある。

☆☆☆☆

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佐々木蔵之介主演の映画では、第38回日本アカデミー賞の最優秀脚本賞、

優秀監督賞、優秀主演男優賞などを獲得

うつろ屋軍師

うつろ屋軍師

著者:箕輪 諒 発行所:学研パブリッシング

米五郎左と呼ばれ織田家の家臣団には、欠かせぬ存在であったが目立たない丹羽長秀。

本能寺の変の時には、四国征伐軍で信孝の副将として一番近い場所に居ながら、脱走兵

が多く動けなかった。長秀にすれば、秀吉は信長の家臣団の下の下から這い上がってきた

成り上がり。その秀吉が、光秀を破り、勝家と織田家相続を争う場(清州会議)に居合わせ、

秀吉に味方せざる負えない事は、大変複雑な思いであっただろうと推察します。しかし、そ

の決断が、123万石の大大名となる。その長秀に仕え、「空論屋(うつろや)」と呼ばれ、家

中からも呆れられていた江口正吉。長秀死後、秀吉は、屁理屈をつけなんと4万石へと大

減封を命じる。後を継いだ城オタクの丹羽長重、そして、空論屋とよばれた正吉が、筆頭家老

となり、丹羽家復活劇が始まる。☆☆☆☆

うつろや.jpg第19回歴史群像大賞入賞作品

甲州赤鬼伝

甲州赤鬼伝

著者:霧島 兵庫 発行所:学研パブリッシング

う〜ん、すごい新人が出てきました。1975年生まれの40歳、この作品がデビュー作です。

当時最強と謳われた武田騎馬隊にあって、最も相手を震え上がらせた赤備えの山県昌景隊。

本能寺の変からさかのぼる事7年、天正三年、五月、設楽ヶ原。長篠の合戦とも呼ばれている。

織田・徳川連合軍35000、対する武田15000。信長、家康が最も恐れた武将・信玄。信玄亡き後、

武田の跡取り若干29歳勝頼。連吾川を挟んで対峙する織田・徳川連合軍は、数も倍以上なら、

馬防柵を三重に張り巡らせ、鉄砲3000挺で待ち構える。武田の重鎮一同が、此度は撤退を進言

する中、勝頼は強引に突撃を命じる。 鶴翼の左翼の山県隊のみ馬防柵をなんとか突破したが、

大将正景、跡継ぎ昌次を失ってしまう。この戦が初陣となつた弱冠15歳の昌満、そしてこの戦で

山県家の大将になってしまう昌満。正景の「鬼となりて、名を天下に」の遺言通りにたくましく成長を

遂げる昌満。武田家が傾いてゆく中、皮肉にも昌満が父と慕う木曽義昌との最後の戦が切っておと

される。☆☆☆☆☆

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下町ロケット

下町ロケット

著者:池井戸 潤 発行所:小学館

さすが直木賞受賞作!大変におもしろかったです。ロケット開発研究者の佃航平は、打ち上げ失敗の責任

かぶり研究者の道をあきらめた。家業を継いだ航平は、得意の製品開発で業績を伸ばしていた。しかし、

商売敵の大手ナカシマ工業から特許侵害で訴えられる。ナカシマ工業は、一流の弁護士軍団を抱え訴訟の

プロのごとく相手を追い詰めるのが得意であった。今回の理不尽な訴訟と同時期に大手得意先を失くし売上

減に悩む佃製作所にとって、長い付き合いであったメインバンクの対応はあまりにも冷たいものであった。

そんな窮地の中、巨大企業である帝国重工がすすめる国産ロケット開発、そのエンジンのバルブに関して、

佃製作所の特許がからんでいた事が判明する。特許使用料をもらえば、安定した収益が見込めるが、社長の

航平は、自社で部品供給したいと主張する。社内の大半が、この社長の考えに反対する中、航平は下町の

町工場がロケットの打ち上げにかかわれる夢に向かい邁進する。徐々に社長の夢の実現に向けて社内が

一本化していく。そしてついに種子島での打ち上げが始まる。☆☆☆☆☆

下町ロケット.jpg第145回直木賞受賞作

株価暴落

株価暴落

著者:池井戸 潤 発行所:文藝春秋

赤字や債務超過で、業績の悪化した上場企業とその系列会社専門に担当する銀行内での部署が、審査部である。

通称「病院」と呼ばれている。ただし、本物の病院との決定的な違いは、生命維持が最優先ではなく、「死」も選択肢

のひとつだという事である。グループ売上高2兆円、傘下に数百社を擁する巨大スーパー 株式会社一風堂、流通

業界の巨像と呼ばれ、会長の風間耕造が一代で築きあげた大企業である。しかし、1兆円を超す有利子負債を抱え、

白水銀行の最大の業績懸念先でもある。その一風堂で爆破テロが起こり、死傷者もでた。株価は暴落、売上は激減

の中、500億の追加融資を白水銀行に要請してきた。大勢が追加支援やむなしの風潮の中、孤高の熱きバンカー

坂東が、銀行の本来の姿を求めるべく立ち上がった。☆☆☆☆

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64

64(ロクヨン)
著者:横山 秀夫 発行所:文藝春秋

20年勤続のバリバリの三上刑事が、予期せぬ広報官に任命される。慣れない職務でも、

なんとか部下3人を使い記者クラブともほどよい関係を築いてきた。しかし、ある交通事故

の匿名問題で、記者クラブと大揉めになってしまう。昭和64年に起きた誘拐殺人事件、通

称64、犯人が捕まらず時効が迫りくるこの時期に、警察庁長官の視察が決定する。長官

視察に向けた記者クラブとの調整も難航だらけ、また古巣の刑事部からは長官視察に隠さ

れた人事に対して猛反発をくらう。また、64の被害者遺族には拒絶され、八方塞がりの広報官三上。

持前の突進力で、ひとつひとつ潰してゆくが、視察前日に思わぬ大事件に遭遇する。

☆☆☆☆

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アメリカン・スナイパー

 アメリカン・スナイパー
 著者:クリス・カイル
     ジム・デフェリス
     スコット・マキューエン
 発行所:早川書房

イラク戦争に4度も従軍して、160人以上の敵を殺したアメリカ海軍特殊部隊SEALのクリス・カイル。

米軍史上最強のスナイパーとして、味方からはレジェンド(伝説)と尊敬され、敵からは「悪魔」と恐れられた。

戦地での極限の状態が続く中、また仲間を失っていく無念さと強い復讐心に燃えるカイルは、次第に心を蝕

まれていく。カイルは英雄なのか、殺人者なのか。☆☆☆☆

クリント・イーストウッドが監督して、戦争映画史上最高の入場者数を誇った映画「アメリカン・スナイパー」、

もちろん封切してすぐに見に行きました。さすがにイーストウッドだけの事はある、素晴らしい出来栄えでした。

「ミリオンダラーベイビー」「グラントリノ」「許されざる者」など素晴らしい作品を世に送り出していますが、今回の

アメリカン・スナイパーは、必ずアカデミー賞を席巻すると思いましたが、結果はなんと一冠のみに終わりました。

クリスカイルは、100キロを超える筋肉質の巨漢、主演のブラッドリー・クーパーは、役作りのため18キロ増量して

鍛え上げました。しかし残念ながら主演男優賞はとれませんでした。しかし、映画は間違いなく☆☆☆☆☆

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信長の血脈

信長の血脈
著者:加藤 廣 発行所:文藝春秋

平手政秀といえば、信長の傅役(もりやく=育てる役)で、あまりにも素行の悪い信長を諌めて

自害したというのが通説であったが、この「平手政秀の証」では、著者は、まっこうから否定して

いる。信長は長男で次男の信行を刺殺した話も、実は信長は次男であり、長男の信行を殺した

わけも政秀自害が大きく関わっていたというのである。

古来、神の息吹く山として崇められてきたきた伊吹山、そこに南蛮人の集団が、外国の薬草を植

え付ける許可を信長からもらったと南面一帯を不法占拠した。これが、貴重な日本原産の薬草に

与える影響は図りしれない。そこで阻止すべく立ち上がったのが、信長の弟清玉上人であった。

しかし、知らぬ間に思わぬ人物が暗躍していた「伊吹山薬草譚」秀頼の本当の父親はだれか?の

「山三郎の死」島原の乱の真の首謀者は?の「天草挽歌」の四編。☆☆☆☆

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創業社長死す

創業社長死す
著者:高杉 良 発行所:角川書店

創業からおよそ30年で売上高約1500億、従業員2000人の大手総合食品メーカーに育てあげた

小林貢太郎。品川にあるその東邦食品工業の本社ビル、社長執務室は6坪、隣の応接間は4坪ほど

しかない。カリスマ経営者として猛烈に突き進んだ小林としては、応接間や執務室はこれで充分であった。

そして、その創業者である小林貢太郎が突然に脳梗塞で亡くなる。カリスマ経営者亡き後、その後継を

めぐって、人々の思惑が入り乱れる。企業とは何か経営とは何かを問いかける一冊である。

☆☆☆

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瓦礫の中のレストラン

瓦礫の中のレストラン
著者:江上 剛 発行所:講談社

大正15年生まれの丑松(うしまつ)は、丹波の貧乏な百姓の長男として生まれた。

弟が2人おり、育ち盛りで腹一杯食べることばかり夢見ていた。18歳になり兵隊に

なったら腹一杯に飯が食えると海軍に志願する。幼馴染で、喧嘩ばかりしていたが、

なぜか気の合う茂一も同じ海軍を志願していた。広島の大竹海兵団に入隊する途

中に、偶然、同じ団に入隊する茂一と駅で鉢合わせとなる。仲良く入団した丑松と茂

一。しかし、新入りにとっては教育という建前のいじめが待ち受けていた。2人とも食

欲が満たされるどころか、飯抜きや、食べられぬくらいに殴られる体罰が連日続いた。

とうとう耐えられなくなった茂一は自殺してしまった。戦争が終わり、茂一の骨を田舎の

母親の元に届ける丑松。少しだけその骨をもらい小さな薬籠の中に入れてお守りがわ

りとする丑松。「食堂の社長になって、腹一杯食いたい!」という茂一の夢を名前のごと

く大柄で馬力のある丑松が、戦後の瓦礫の中から獅子奮迅する物語である。

☆☆☆☆

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人生の〆方

人生の〆方
医者が看取った12人の物語
著者:大津 秀一 発行所:新潮社

緩和医療に携わる著者(医者)が、様々な人生の〆(死)に臨席してきた中で印象深い

人達の話である。C型肝炎ウィルスにより肝硬変で肝不全となった70代の遠山さん、

飄々とした風貌で、喜怒哀楽を表さない人であった。腹水が貯まり入院を勧めても

「そうですか」「わかりました」としか言わない遠山さん、けっして無駄口はきかない。

医者の目から見てもかなりつらく苦しいだろうと思っても「大丈夫です」「今日も変わりま

せん」「今日も変わりません」と繰り返すだけであった。何日も「変わりません」が続いた

ある日に、遠山さんが大量に吐血した。駆けつけた著者(医者)に「先生、助けてください」

と初めて苦しみの訴えを口にした。応急処置をして、後は遠山さんの手を握り、声をかけて

あげるだけであった。時間が流れ呼吸も少し楽になり、少し落ち着いた遠山さんは、「先生、

ありがとう」と言って、翌日に亡くなった。この驚異的な我慢強さと精神力、遠山さんは、昔の

日本人、サムライとはこのようであったのかも知れないと結んでいます。

40代前半の喜里川さん、東北地方の村役場に勤める4児の父であった。地方の病院で原因

不明の膠原病で1年以上も大量のステロイドを服用していた。緩和効果の高いステロイドを投与

され続けた事により、病気の本質をつかめぬまま長期入院は続いた。そして、病気が好転する

ことなく敗血症で亡くなられてしまった。末期がん患者の苦痛緩和のステロイドが、長期投与を

続けると恐ろしいものへと変貌するという事例を喜里川さんで思い知らされたと結んでいます。

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空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ 上・下
著者:池井戸 潤 発行所:講談社

走行中のトレーラーのタイヤが外れて母子を直撃した。男の子はかすり傷ですんだが、

30代の母親は即死。このトレーラーを所有していたのが、トラック80台、年商7億、従業

員90名の中小運送会社の赤松運送である。整備不良の烙印を押され、まさに崖っぷち

に追い詰められた赤松運送。しかし、どうしても納得のいかない赤松社長は、真相究明

に乗り出した。このトレーラーは、大手自動車会社のホープ自動車のビューティフルドリー

マーという車種である。事故車両のハブをホープ自動車は調べますといったまま返そうと

しない。疑問を感じた赤松社長は、再三にわたり返却依頼するが、一向に要領の得ない

回答でごまかし続けるホープ自動車の品質保証部。この時すでに、何回も続く事故処理で、

ホープ自動車はリコール隠しに動いていたのであった。決定的な証拠のないまま、じりじりと

巨大企業による包囲網に身動きが取れなくなっていく赤松。家族も周囲から孤立、会社経営

も危機的状況の中、ある情報を頼りに真向から巨大企業と闘う姿を描いた、感動の大作。

☆☆☆☆☆

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海賊とよばれた男

海賊とよばれた男 上・下
著者:百田 尚樹 発行所:講談社

ご存知、百田尚樹氏の大ベストセラーの歴史小説です。

実に読み応えのある大作でした。

一代で8000人を超える大企業に育てあげた出光興産の出光左三氏をモデルにしてあり、

社名を国岡商店に、左三氏を国岡鉄造氏(正式には国岡鐡造)としてあります。終戦を迎

えた時から物語は始まります。その時点で、すでに一千人の社員を抱えていた国岡商店。

明治44年(1911年)創業の国岡商店は、この35年の間、ただの一度の馘首もなく、人間

尊重の精神は徹底しており、就業規則もなければ出勤簿もなく、馘首もなく、定年もない。

しかし、約7割が海外支店におり、敗戦と同時にすべての海外支店は閉鎖、石油販売会社

としての活動も、まったく石油が入手できなくなり仕事もなくなってしまった。幹部の、まず人

員整理からという提案に、まっこうから反対する鉄造は、一人のクビも許さなかった。そして

ラジオ修理などできうる様々な仕事に従事させこの苦難の時代をなんとか乗り切ってゆく。

そして物語は、幼少期から学生時代へ。そして丁稚奉公から独立へとさかのぼる。明治44年

25歳で、門司で旗揚げした鉄造。しかし、なかなか商売は軌道に乗らず、日田からの出資も

底をついてしまう中、小型漁船に使われている灯油を軽油に変える発想で売り込みを始める。

門司の対岸の下関では、国岡商店の急激な台頭に、特約店契約破りの苦情が仕入れ先に

殺到する。しかし、鉄造は、なんと小型船に軽油を積んで、海上で軽油を販売していたのである。

それが噂となり「海賊」と呼ばれる様になった。それから、数々の苦難を乗り越えて鉄造は、世界

に舞台を移していく。もちろん☆☆☆☆☆

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ALL YOU NEED IS KILL

ALL YOU NEED IS KILL
著者:桜坂 洋 発行所:集英社

トムクルーズ主演の映画の原作が、日本発信だと知り読みました。公式には、

8個の隕石と発表された物体のうち4個が海の底に沈んだ。地球人の手が届

かない深海に落ちたそれは、ナノマシンという形で大量増殖した。土壌を食べ、

排泄された土壌は、地球上の生物にとり有害となり、土地は砂漠化して、海は

濁った緑色となった。この異星の物体が進化を遂げ、カエルの溺死体が立ち上

がった様な姿になり、その短い腕でひとなぎされただけで、人間の体はたやすく

千切れ飛ぶ。また噴出孔と呼ばれる穴から飛ぶスピア弾は、40ミリ機関砲と同

等の威力がある。人はそれをギダイと命名した。生身の人間では到底勝ち目が

ないので、370キロの握力のでるパワードスーツに身を包み、ギダイと戦う。

初年兵のキリヤ・ケイジは、初めての戦闘で死んでしまうが、目覚めると戦う前日

に戻っていた。☆☆☆☆

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プライド

プライド
著者:真山 仁 発行所:新潮社

老舗洋菓子メーカーのパリジャン製菓の内部告発文がマスコミに流れた。

消費期限切れの牛乳を使用している。主力工場の八王子工場はバイキン

だらけである。といった内容である。役員会議室で犯人に疑われた柳澤は、

潔白を証明するため事実関係の究明に乗り出す。ところが犯人に名乗りで

たのは、先代から直伝で教わった最後の職人と呼ばれた檜垣であった。も

っとも製造管理にやかましかった檜垣がなぜ・・・「プライド」

六期十八年代議士生活を送り、実質初入閣の厚生労働大臣に着任した和

歌森。平成の爆弾男の異名を持ち総理であろうと事務次官であろうと、お構

いなしに攻撃する。また、和歌森夫人は、三代の首相の下で、中国問題担当

補佐官を務める才女でもあった。着任早々にまたまた爆弾発言が飛び出し、

マスコミや野党から辞職コールがまきおこる、しかしそこには・・・「暴言大臣」

他に四編。☆☆☆

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ぼくたちの家族

ぼくたちの家族
著者:早見 和真 発行所:幻冬舎

 

東京郊外に念願のマイホームを手に入れ、息子2人にも恵まれた若菜克明。

事情によりサラリーマン生活を捨てて独立した克明。しかし、事業はなかなか

軌道に乗らず、ローン負担や教育費に家計は火の車となり、自然に妻:玲子

の財布の中にもノンバンクのカードが増えていった。結婚して寄り付かない

長男:浩介、予備校に二年通い、東京に下宿した次男俊平。バラバラになった若菜家。

そんな折、玲子の脳にガンが見つかる。長男、次男が家をかえりみた時借金まみれの

父親と母親の実態に直面して狼狽する息子たち。しかし、バラバラになった家族が、

玲子の病気でまたひとつになっていく。☆☆☆

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シャイロックの子供たち

シャイロックの子供たち
著者:池井戸 潤 発行所:文藝春秋

 

十話から構成されていて、一話ずつで話は終わるのだが、すべてに

東京第一銀行長原支店がベースになっています。この支店で働くさま

ざまな年齢や職種の行員たちの姿が描かれています。がむしゃらに部

下を叱責してノルマ達成に向けて突っ走る副支店長の古川。コツコツと

努力するが、結果がついてこない融資課次長の友野。早死にした父親

に代わり一家をささえる女子行員の北川。そして長原支店エース滝野の

思わぬ結末など盛りたくさんの話で飽きさせない本です。☆☆☆☆

 

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迎撃せよ

迎撃せよ
著者:福田 和代 発行所:角川文庫

開発中の空対艦ミサイルXASM-3を4発搭載したF-2戦闘機が、航空自衛隊岐阜基地

から盗まれた。うち1発を冨士の樹海にむけて発射したのち日本海へ逃走。

ミサイル防衛の航空自衛官・安濃一尉は、このテロ行為に退職した元上司の加賀山が

関わっている可能性をいち早くつかむ。単独で加賀山を止めるべく府中基地を飛び出した

安濃は、テロリスト達に捕らわれてしまう。部下の遠野真樹二尉は、安濃救出に軽井沢へと

向かう。金が振り込まれなければ、30時間後には日本の主要都市にミサイルを撃ち込むと

いうテロリストの要求にどう対処するのか、この期に乗じて北や中国も暗躍し始める。

☆☆☆

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仇敵

仇敵
著者:池井戸 潤 発行所:講談社

メガバンク東都首都銀行の企画部次長であった恋窪商太郎。

出世コースの恋窪が、ある内部の不正を追及しだした途端に

いわれなき罪を着せられて辞職に追い込まれる。

地方銀行の庶務行員となり平凡な生活を送る恋窪であったが、

元同僚の桜井の死から、東都首都銀行内に巣食う峰岸常務一派

との新たな戦いの火ぶたがきって落とされる。☆☆☆

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銀行狐

銀行狐
著者:池井戸 潤 発行所:講談社

銀行業務では、一年に一度あるかないかで、現金が合わない事がおきる。

過払いによる差異範囲ではなく、三百万となると盗難の可能性がある。そし

て、新たに二百万、計五百万もの大金が紛失した。係長の灰原は、支店長

命令で行内全員の私物検査するが、現金は出てこない。何度もビデオモニ

ターを見ていた灰原は、ある不信な動きに目がとまる「現金その場かぎり」

ぎんこうの あほどもへ てんちゅー くだす 狐

帝都銀行頭取宛に脅迫状が届いた。銀行内不祥事担当・特命の指宿は、

早々に警視庁捜査一課の門倉と調査に乗り出す。キャッシュコーナーからの

不審火、顧客情報漏洩、系列生保社員襲撃と狐を名乗る犯人の行動はエス

カレートしてゆく。相続税対策で系列生保が売り出した変額保険が引き金に

なっていた事をつきとめる指宿。しかし、銀行員でしかできない行動の謎は

・・・表題「銀行狐」他に3編収録。☆☆☆☆

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かばん屋の相続

かばん屋の相続
著者:池井戸 潤 発行所:文藝春秋

十年前にバンカー永島が担当していた神室電機は、約8億の負債を負って倒産した。

そして、神室個人も破産宣告を受けた。しかし、クリスマス商戦真っ盛りの百貨店で、

永島が目にしたものとは。高級ブランド店から、大きなショッピングバッグを提げて、数

人の店員に見送られて店を後にする神室本人であった「十年目のクリスマス」。

池上信用金庫のメイン取引先である松田かばんの社長が急逝した。ところが遺言には、

専務である次男ではなく、大手銀行に勤める長男にすべての株を譲ると書かれていた。

相続放棄して新たなるかばん屋を設立する次男、職人の半分がその次男の会社に移り

たいと長男に申し入れ、その退職金などに1億の融資を申し込まれた池上信用金庫。元

大手銀行マンの長男の尊大な態度に担当の小倉は松田かばんの将来を危惧する

「かばん屋の相続」など全6編。☆☆☆☆


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後藤又兵衛

後藤又兵衛
著者:風野 真知雄 発行所:学研パブリッシング

戦国時代、力のある武士は、主家を替える事を不義理とはおもわなかった。

明智光秀や細川幽斎も元は足利義昭に仕えていた様に、おのれの技量を

使いきれぬ主君が悪いのだという考えを持っていた。190pの巨漢藤堂高

虎は、8回主人を替えて最後には、伊勢22万石の大名となった。黒田家24

将の一人として、数々の修羅場で大いなる成果を残した豪傑後藤又兵衛も

その一人である。官兵衛没後2年、息子:長政の黒田家を出奔した又兵衛。

朝鮮での文禄・慶長の役、そして関ヶ原と、数々の武功と功名を得ていた又

兵衛を多くの大名が欲しがった。細川忠興、池田輝政、福島正則などそうそ

うたる戦国大名から声がかかった。しかし、苦々しく思っている長政は、あら

ゆる手をまわし又兵衛の士官の邪魔立てをする。しかたなく京で浪人になり、

軍学塾をしていた元に秀頼の使者が会いにくる。真田幸村の真っ赤な旗印、

後藤又兵衛の総白の旗印、この二人が大阪城に入る事により士気が最高潮

に達する秀頼軍。この二人は、初めての軍議で、宇治、勢多にうってでては

どうかと進言している。誰もこの難攻不落の大阪城に籠城することと思い込ん

でいるが、籠城することは、援軍を頼むべきものであり、緒戦を制すれば、西

国大名も味方に名乗り上げるだろうという意図であった。しかし、淀の断固反

対にあい籠城となる。その後は、和議により裸城とされた大阪城に夏の陣を

戦うだけの力はそもそも残されておらず、あとはどうやって死するかという戦い

方だけになってしまった。☆☆☆☆

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幸福な生活

幸福な生活
著者:百田 尚樹 発行所:祥伝社

衝撃のデビュー作「永遠のゼロ」、大ベストセラーとなり映画も大ヒット

上映中であります。もちろん、私も映画を見に行きましたが、素晴らし

い原作に負けず、完成度の高い仕上がりとなりまたまた感動いたしま

した。その永遠のゼロの隣に山積みとなって置かれていたのがこの本

です。著者が、大作の息抜きに書いた短編集ですが、最後の1行にオ

チが待っています。何篇かは、途中でオチがわかってしまいますが、そ

れも楽しく読ませてもらいました。☆☆☆

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生存者ゼロ

生存者ゼロ
著者:安生 正 発行所:宝島社

ふらっと立ち寄った本屋で、平置きになっていたこのタイトルに目がとまり

読んでみました。

北海道沖に浮かぶ石油採掘基地(TR102)が、突然連絡を絶った。一番

近くを航行していた護衛艦くらまに調査の依頼が入る。くらまからロクマル

のヘリで調査に向かった廻田三等陸佐たちが見た物は、全身が壊死した

ようにボロボロになったもはや人間とは思えぬ死体の山であった。テロ攻

撃か、謎の病原菌か、原因がわからぬまに、今度は北海道に飛火する。

内陸の町がまるまるひとつ全滅するにあたっても、相手の正体がつかめな

い。精神異常をきたしている天才感染症学者富樫に協力を求めて、ひとり

敢然と原因究明に乗り出す廻田。そして思わぬ敵と戦う事になる。是非、

映画化して欲しい本でした。☆☆☆☆

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第11回「このミステリーがすごい!」大賞受賞

冬山の掟

冬山の掟
著者:新田 次郎 発行所:文藝春秋

新婚の池塚は、妻が寝言でジョージと言っているのを何回か聞いた。

調査を依頼して、元付き合っていた麻尾譲次だとわかる。

菅平のスキー場で、何食わぬ顔で声をかけた池口は、麻尾たち4人に

同行して根古岳に登ることになる。荒れ模様になってきて、初心者の

3人が途中で下山して、麻尾と二人だけになった池塚に、ある考えが浮

かぶ・・・「地獄への滑降」

10人のパーティーで冬の八ヶ岳に挑んだ、10人が硫黄岳石室小屋に着くと

、1人が発熱してだんだんと容態が悪化していった。途中の夏沢峠のやまび

こ荘には、燃料や食糧、防寒具、医療品がおいてある。午後3時をまわってい

たが、池石隊長は、2人の隊員を連れてやまびこ荘にそれらを取りに帰る道を選ぶ。

冬山では午後になって新しい行動を起こすなというルールにそむく行動であった。

かくして池石ら3人に猛烈な吹雪が襲いかかるのであった。・・・「冬山の掟」

などの10編の短編集。☆☆☆

冬山の掟

敗者復活

敗者復活
著者:藤田 宣永 発行所:徳間書店

老朽化したバッティングセンター、その経営者である57歳の崎見邦彦が主人公である。

育ての父親の経営するスーパーは、右肩上がりの成長を遂げていた。しかし、バブルが

はじけて、何とか経営を継続するために粉飾決算に手を染めだした。

当初、反対していた邦彦であったが、父が倒れ、自分が社長となり、ますます追いつめら

れてゆき、新たな粉飾決算を続けたが、やがて破綻、服役、妻子も彼の元を去ってしまう。

唯一、出所した邦彦に残された財産が、このバッティングセンターである。

このバッティングセンターの土地所得をめぐり、様々な問題が邦彦に襲いかかる。

服役仲間の幸太郎、別れた妻子、元プロ野球選手などが登場して平穏な生活が一変して

騒がしくなって行く。 ☆☆☆

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「余命3か月」のウソ

「余命3ヵ月」のウソ
著者:近藤 誠 発行所:KKベストセラーズ

会社経営の62歳のAさんが、定期健診で直径5ミリの胃ガンが見つかりました。

担当医が、早期なのですぐに手術をと急かせます。しかし、まったく自覚症状が

ないので様子を見ることにしました。それから9年目に自覚症状が出て、ちょうど

10年で亡くなりました。仕事をやりとげ、会社を整理し、旅行も楽しみ穏やかに

亡くなりました。もし、手術を選んでいたら1年か2年の余命だったかもと結ばれ

ています。もちろん様々なケースがあるので、この症例だけですべてを決めつけ

る訳ではありません。この本の帯にも書かれている様に、

※普通に歩いて病院に行けたのに「余命○ヵ月です」と言われた。

※自覚症状がなく、人間ドッグや検診で見つかったがんで、余命を宣告された。

※初診や初診後3ヵ月以内に、余命を宣告された。

※「今すぐ手術しないと余命○ヵ月です」など治療とセットで脅かされた。

すべてデタラメですと、歩いて病院に行ける人間が、「余命3ヶ月」なんてありえない、

がんが恐ろしいのではなく、がんの治療が恐ろしいのです。と書かれています。

以前にも書きましたが、本物のがんとがんもどきの話が多々出てきます。

CTから超音波検査まで、どんな最新鋭機で検査しても直径1センチ前後しか見つ

けられない。本物のがんなら100分の1の0.1ミリで転移する能力があるので、手術

して転移もありませんでした、というのはがんもどきであると断定しています。

是非みなさんもお読みください。


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ほかげ橋夕景

ほかげ橋夕景
著者:山本 一力 発行所:文藝春秋

薄っぺらな木札に、閻魔や鬼、大蛇など気味の悪い絵ばかり書かれている物が

2枚で一文で売っている。どこの駄菓子屋でも売っているので、子供は箱の中に

手を突っ込み2枚の木札を取る。江戸中の子供の中で、その木札を集め、見せ

びらかす(現在のポケモンカードかな)遊びがはやっている。金の閻魔が頂点で、

色々な河童が描かれているのがスカである。7歳の金太が友達から2枚の木札を

盗んだ。誰でも一度は経験のあるオヤジからの大目玉を綴った「泣き笑い」他に七編。

☆☆☆

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清州会議

清州会議 

著者:三谷幸喜 発行所:幻冬舎 

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信長・信忠亡き後の有名な清州会議、織田家の将来を決めるために暗躍する羽柴秀吉(大泉洋)。

猪突猛進だが、恋するお市(鈴木京香)にはめっぽう弱い柴田勝家(役所広司)。

勝家とは一蓮托生でこの清州会議に挑むが、明智討伐での失態や将来の織田家を考え秀吉方

に傾いていく丹羽長秀(小日向文世)。

信長の乳兄弟で損得勘定に敏感な池田恒興(佐藤浩市)。

この4人にて話あわれた清州会議を現代語訳で、おもしろおかしく展開してゆく話。

この現代語訳という発想が非常に斬新で楽しく読みました。

(   )内は、119日公開の映画での配役俳優です。☆☆☆☆

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医者に殺されない47の心得

「大往生したけりゃ医療とかかわるな」

☆☆☆☆☆

 

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著者 近藤 誠氏 第60回 菊池寛賞受賞!

狐火ノ杜(きつねびのもり)

 

☆☆☆

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ソロモンの犬

ソロモンの犬
著者:道尾 秀介 発行所:文藝春秋

大学生の男女2人の4人が主人公。大学教授の鏡子の一人息子が、犬の散歩中に

交通事故に遭い死亡する。この事故に疑問を感じた4人の内の秋内が、動物生態学

に詳しい間宮助教授の所に相談に訪れる。

事故以来行方不明になった雑種のオービーが見つかり、間宮が飼いはじめる。そして、

オービーの仕草から間宮が、思わぬ真実を突きとめてゆく。☆☆☆

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雨降ノ山

居眠り磐音 江戸双紙6

著者:佐伯 泰英 発行所:双葉社

久しぶりに「居眠り磐音」に帰ってきました。今回の作品は、第6巻で、現在43巻まで

シリーズが続いています。そして、シリーズ累計1600万部突破というすごい数字が新

聞等に載っています。この磐音シリーズを読んでいると、何回放送しても高視聴率を取

る水戸黄門のような作品と似た印象を持ちます。

長くなりましたが、第6弾、雨降ノ山です。花火見物の納涼船の護衛を今津屋から頼

まれる磐音。今回は船上での大立ち回りから始まる。無事、納涼船の護衛を終えた磐音、

続いて、今津屋の内儀の病平癒を祈願した雨降山大山寺への旅の護衛を頼まれる。

☆☆☆

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月の武将・鏡の武将 黒田官兵衛

月の武将
鏡の武将 黒田官兵衛 
著者:上田秀人 発行所:徳間書店

来年の大河ドラマが、岡田准一演じる「軍師 黒田官兵衛」である。

赤松三千の兵に対して、二百の兵で夜襲、見事赤松を敗走せしめた黒田官兵衛は、

一躍世に知られる名将となった。しかし、仕える小寺政職は、毛利につくか、織田に

つくか、なかなか決まらない。いち早く天下は信長が抑えると見た官兵衛は、単身秀

吉の元へ。信長に目通りを許された官兵衛は、信長の器の大きさに瞠目する。そして、

おのれの見立てが正しかったと、主君・小寺氏を説き伏せるが、優柔不断な政職は、

それでもなかなか旗色を決めない。そんな主君を見限って秀吉の参謀となった官兵衛、

秀吉の軍師として竹中半兵衛と両輪となり、秀吉の躍進がはじまる。荒木村重に、10

か月の間、地下牢に閉じ込められた官兵衛は、足が不自由になって救出される。しかし、

その間に竹中半兵衛は、官兵衛の一人息子松寿丸(のちの長政)の命を救い、病で亡

くなっていた。半兵衛の国を統一して争いのなくなる世の中にしたいという夢を、官兵衛

が受け継ぎ、半兵衛の法名の深龍水徹の文字を、兜の裏に刻み、戦の度にそれを見て

は策をねり、秀吉を天下人にするのであった。☆☆☆☆

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反旗は胸にありて

反旗は胸にありて
著者:犬飼 六岐 発行所:新潮社

慶安の変とか由比正雪の乱とも言われる事変が、1651年に起こった。

関ヶ原から50年、大量に発生した浪人たちによる討幕計画であった。

小心者で腕前もからっきしダメな冴えない浪人・熊谷三郎兵衛が主人公。

由比正雪を師範とする軍学所「張孔堂」に、なぜか入門する事になった三郎兵衛。

なぜダメ浪人に声がかかったのか。彼には、ある特技があった。

それは、足が速い、つまり今風に言えばパシリの役であった。

思わぬ展開から仲間に引き入れられた三朗兵衛が、江戸、京、大坂と

駆け抜ける。 ☆☆☆

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天主信長

天主信長 我こそ天下なり
著者:上田 秀人 発行所:講談社

これだけ信長の書物が氾濫していますが、まだ切り口が残っているのか。

なるほど、そういう展開もありかなと唸らせる一冊です。

天才軍師・竹中半兵衛だけが、信長の野望の理解者であった。

半兵衛没後、高松城水攻め中に、信長から安土に来る様に命じられた秀吉と官兵衛。

安土城の天主最上階で待つ信長、そこにはなんと光秀も呼ばれていた。

天下人信長を冷静に分析してゆく半兵衛と官兵衛。

本能寺の変から430年、驚愕の新説が幕を開ける。☆☆☆☆

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狭小邸宅

狭小邸宅
著者:新庄 耕 発行所:集英社

名門大学を卒業、中堅の不動産会社に就職する松尾。紐で繋がれた看板2枚

を前後にぶら下げて、人ごみの中、声を張り上げる。通称サンドイッチマン。

入社して毎日サンドイッチマンをやらされる。そして4カ月が過ぎる頃には、半数

以上が辞めている。半年以上たっても一件も売れない松尾。もう辞めろと上司から

何度も言われる松尾。何度も何度も通告され、とうとうあと1ケ月やってダメなら辞

めますと返事をしてしまう。どうせ売れないなら一番会社が売りたがっていた物件を

とことん一か月やってみようと。毎日サンドイッチマンで繰り出す松尾。諦めかけて

いた時に二人の中年女性からとうとう声がかかる。☆☆☆☆

狭小邸宅.jpg第36回すばる文学賞受賞

孤闘 立花宗茂

孤闘 立花宗茂
著者:上田 秀人 発行所:中央公論新社

九州・大友宗麟の配下で、名将とうたわれた高橋鎮種(紹運)しげたね(じょううん)と戸次道雪(べっきどうせつ)。

道雪の活躍により、名門立花家を継ぐように薦める宗麟、道雪の一人娘に紹運の嫡男を養子にもらい受け、立

花家を継がせる事となる。その養子が立花宗茂である。大隅、薩摩をのぞく九州に一時は覇を唱えた大友家。

しかし、天正六年に島津義久と耳川で激突、大敗を喫してからは次第に傾いてゆく大友家。天正十四年(1586)、

島津二万の軍勢が大友家を襲う。守るは、父親・高橋紹運の岩屋城、そこが落ちれば、宗茂の立花城。立花城も

落ちれば大友家も風前の灯。名将・紹運は762名で、島津軍6000名あまりを死傷さす活躍を示し、15日間の籠城

に耐えた。全滅した岩屋城を後にして補充の終わった島津軍4万が、立花城を囲む。わずか1200で城を守る宗茂。

立花城の地の利を生かした宗茂の数々の作戦が功を奏し、立花城もよく耐えた。しかし、多勢に無勢で、今日で終

わりかと思われた時に、秀吉の20万の大軍が九州上陸。島津は引き上げたのであった。やがて宗茂を気にいった

秀吉は、柳川13万石の直参大名へと取り立てるのであった。

諸大名の前で、「東国に本多忠勝あり、鎮西に立花宗茂あり、ともに天下無双の勇士あり」といって秀吉はほめたた

えたと伝わる。その後、二度にわたる朝鮮出兵から関ヶ原へと。悩んだ末に西軍に加担した立花宗茂、淀の命により

陥落させた大津城に留まる事に。そして関ヶ原の大戦が、隣で半日で終わってしまう。ついに立花家は改易となってし

まう。しかし、五年後の慶長十年、将軍を譲られた秀忠により、許しをもらい五千石で旗本に登用、家光にも仕え、最

後には柳川復帰がかなった数少ない西軍大名である。☆☆☆☆

孤闘.jpg第十六回中山義秀文学賞受賞作

龍天ノ門

龍天ノ門 居眠り磐音 江戸双紙5
著者:佐伯 泰英 発行所:双葉社

安永三年(1774)正月を江戸で迎えた坂崎磐音、正月早々に漆工芸の加賀屋で

家族・奉公人が全員惨殺される事件が起こった。南町奉行所が探索したところ、

犯人は、六年前に取り逃がした百兵衛一味であった。

またしても年番方与力・笹塚孫一に助成を頼まれる磐音。

国元の豊後関前藩の国家老に就いた磐音の父。しかし膨大な借金に参勤下番の

お金すら都合できない藩の財政を懸命に立て直そうとする父正睦。

脱藩した磐音だが、藩の窮状を救うべく知り合いの両替商の今津屋に掛け合う

磐音であった。☆☆☆☆

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パイの物語

パイの物語 上・下
著者:ヤン・マーテル 訳:唐沢 則幸
発行所:竹書房

パイの物語上.jpgパイの物語下.jpg

1977年、日本の貨物船「ツシマ丸」がインドから出航した。動物園を経営する一家

と様々な動物たちを載せた巨大な船は、移住先のカナダを目指した。太平洋に入り、

ミッドウェイ諸島への途中に嵐で船は沈んだ。救命ボートに乗り、16歳の少年パイは

一命を取り留めた。しかし、同じボートには、傷ついたシマウマと獰猛なハイエナ、高齢

なオラウータンも乗り込んでいた。傷ついたシマウマを襲うハイエナ、オラウータンも食い

ちぎるハイエナ、ついに最後は自分が・・・と思われた時、シートの下には考えられない

動物が乗り込んでいた。200キロを超えるベンガルトラである。リチャード・パーカーと名

づけられたトラが、一撃でハイエナを殺し、食べつくしてしまう。

それから227日の長いつらい漂流が、パイとパーカーに待っていた。☆☆☆☆

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映画も見に行ってきました。3Dで、今にもトラが襲ってくる迫力と、きれいな海と

神秘的な自然界とがスクリーン一杯に展開され、大変素晴らしい仕上がりとなってました。

普通は、圧倒的に映画より本の方が良いのですが、これは本を凌駕する出来栄えに大変満足しました。
☆☆☆☆☆

ラットマン

ラットマン
著者:道尾 秀介 発行所:光文社

アマチュアロックバンドの4人、スタジオでの練習中に不可解な事件に

遭遇する。これは、事故か殺人か。

ギタリストの姫川は、小学生の時にも不可解な事件で姉を亡くしていた。

スタジオで死んだひかりという女性は、姫川の子供を身ごもっていた。

次々に浮かび上がる事件の真相、二転三転して思わぬ犯人像が浮かび上がる。

☆☆☆

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シャドウ

シャドウ
著者:道尾 秀介 発行所:東京創元社

凰介という小学校5年生が主人公。母親が癌でこの世を去る。一人っ子の凰介の

父親・洋一郎との二人の生活が始まる。洋一郎と大学時代の同級生の水城、また

水城の妻と凰介の亡くなった母親ともやはり大学の同級生。その一人娘の亜紀も

同じ小学5年生である。数日後、水城の妻が、夫の職場のビルから飛び降り自殺

をとげる。精神医学界で権威ある田地医師は、二組の恩師でもあった。精神病を

患う父洋一郎を心配して凰介は、田地医師に相談する。その後、二転三転するうち

に驚愕の真実にたどり着く。☆☆☆☆

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 第七回本格ミステリ大賞受賞作

雪華ノ里

雪花ノ里 居眠り磐音 江戸双紙 4
著者:佐伯 泰英 発行所:双葉社

許婚・奈緒が遊郭に身売りされる。故郷豊後関前藩から奈緒の後を追い

長崎へ。しかし奈緒はまたも身売りされて東国へ。京都、金沢と旅を続け

る直心影流の達人坂崎磐音、行く先々で事件に巻き込まれる。ようやくわ

かった奈緒の行方は、なんと磐音が住む江戸であった。久しぶりに江戸の

地を踏んだ磐音、江戸では両替商を専門に狙う押し込み強盗が頻発してい

た。磐音の正義の剣が炸裂する。第4弾!☆☆☆

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光媒の花

光媒の花
著者:道尾 秀介 発行所:集英社

カラスの親指が面白かったので、この作家の本を探しました。

全6章の連作になっており、ほんとうに小さい接点があります。

認知症の母親と二人でひっそりと暮らす中年のハンコ屋、少

年時代に父親が自殺、その真相は。(隠れ鬼)河原で虫取り

を楽しむ兄妹、暗くなり、いたずら目的に近づいてくるホーム

レス、そこで起こった殺人事件(虫送り)など六編。☆☆☆

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第23回山本周五郎賞受賞

カラスの親指

カラスの親指
発行所:講談社 著者:道尾 秀介

結末はけっして口外しないでください!とカバーに大書きされているので、さわりだけにします。

詐欺で生計を立てる中年の2人。そこに若い女姉妹と太っちょの手品師が同居する事となる。

5人で生活しはじめた彼らに、執拗な嫌がらせが繰り返される。そこで5人は、ある大計画

(アルバトロス作戦)を企てる。その結末やいかに。☆☆☆☆

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花芒ノ海

花芒ノ海(はなすすき) 居眠り磐音 江戸双紙3

著者:佐伯 泰英 発行所:双葉社

いつのまにか1400万部突破!平成の大ベストセラーの帯がついてます。

江戸詰めから故郷に帰り、ある事から殺傷事件となってから一年、磐音は、

相変わらずの貧乏長屋でその日暮らしを続けていた。

大切な友を亡くした殺傷事件の裏に隠された陰謀を突き止めた磐音。藩主

が江戸への参勤を狙い、改革派を一掃しようと濡れ衣をきせて磐音の父親

まで蟄居閉門させられてしまう。豊後関前藩国家老の宍戸文六の野望に、

磐音の正義の剣が炸裂する。第3弾。☆☆☆☆


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居眠り磐音 江戸双紙

陽炎ノ辻 居眠り磐音 江戸双紙1
寒雷ノ坂 居眠り磐音 江戸双紙2
著者:佐伯 泰英 発行所:双葉社

本屋に大書きされた1200万部突破の垂れ幕が目に飛び込み、そのうちに読んで

みようと思っていたので、まず1.2巻を買いました。読みやすく、映像が浮かび上る

作風で、銭型平次(古いな)や水戸黄門のドラマの様な展開でした。江戸中期、江戸

詰めから解放され、故郷豊後に3人の若い仲の良い武士が帰省する所から物語は

始まる。しかし、故郷に帰ったその晩に思わぬ事から殺傷沙汰になり、一人残った

坂崎磐音。成り行きから、仲間を切った磐音は、逃げる様に江戸に戻る。浪人にな

った磐音の貧乏長屋でのその日暮らしが始まった。両替商の用心棒になった磐音が、

陰謀に巻き込まれながら悪を斬る!第1巻

故郷での殺傷事件は、豊後関前藩の守旧派が仕組んだものだとわかった坂崎磐音。

以前、改革派として共に勉学に勤しんだ江戸詰め勘定方の上野伊織。再会した二人に

上野から次々と寄せられる守旧派穴戸一派の卑劣な行動、ついに磐音に近づいた上野

伊織まで暗殺される。たった一人で豊後関前藩の穴戸派に戦いを挑む坂崎磐音!第2巻

☆☆☆☆


陽炎の辻.jpg春雷ノ坂.jpg

終の信託

終の信託(ついのしんたく)
著者:朔 立木(さく たつき)発行所:光文社

重度の喘息患者・江木を18年に渡り担当してきた折井綾乃医師。設計技師として働く江木は、

専門外の事にも幅広い知識を持ち、特に喘息患者として一生使い続けなければならない薬剤

に対する知識は、医者をも超えるものがあった。どんどんと症状が悪化してゆく江木、「最後は、

長引かせずに楽にして欲しい」と折井医師にすがる江木。脳死で運ばれてきた江木の気管内

チューブを抜く折井医師。そして医者が患者のためを思い取った行為が、殺人罪に問われてゆ

く ☆☆☆☆


終の信託.jpg      tbn_f3d86d651717455c.jpg10月27日よりロードショー

梅雨将軍 信長

梅雨将軍 信長
著者:新田 次郎 発行所:新潮社

粗暴な振舞いの19歳の信長を諌めて自害した平手政秀の弟、平手左京亮の話。

忠義いってんばりの政秀と違い、若くして京都で遊び、ひょうひょうとして幸若に凝

って職をしりぞき、信長の所に身を寄せていた。今川の大軍が、尾張を襲うとあって、

清州城中は、上や下への大騒ぎ。しかし、左京亮は、平然と鼓を打ち続ける。気を

うかがっていた左京亮は、信長に大豪雨の予想を伝える。そして桶狭間の戦いへと

つながる。また、長篠の合戦でも、梅雨の晴れ間を予想して、鉄砲での大勝利へと導く。

最後に今年の梅雨は、側臣に乱ありと信長の備中出馬を諌めた左京亮、しかし、信長

は笑い飛ばし、本能寺へと。他に八篇。 ☆☆

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富士に死す

富士に死す
著者:新田次郎 発行所:文藝春秋

生誕100年になる新田次郎氏は、昭和7年から昭和12年まで、富士山頂観測所に勤務されていた。

白衣に白脚絆(しろきゃはん)、草鞋で富士山に登ってくる富士講信徒を何度も見かけたそうです。

年平均して約3万人の信徒が登山したとして、その10倍の約30万人が富士講の信徒と考えられる。

そこからさかのぼる事約200年前の享保年間の話である。

富士信仰の4代目月旺は、5代目を二人の人物に譲った。月信と月行である。月信(村上光清)は、

金貸し業を手広くやり、布教にも力を入れ信者数も二万人に達していた。もう一方の月行は、弟子を

一人も取らず、ひたすら修行に明け暮れた。商人の伊兵衛を10年も20年もかけて自分の唯一の弟

子にした月行。伊兵衛改め食行身禄が六世を継いだが、月行に輪をかけた変わり者と呼ばれた。

一生弟子も持たず、入定(断食して死ぬ)して63歳の生涯を閉じた。それから身禄の富士講に火がつ

きまたたくまに教えが広がっていった。☆☆☆

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先導者・赤い雪崩

先導者・赤い雪崩
著者:新田次郎 発行所:新潮社

山岳小説の大御所新田次郎氏の短編集である。

4人の女たちを連れて、上越国境を縦走する三郎。女たちの虚栄心に

つられて遭難してしまう5人のパーティー。先導者=リーダーの三郎が、

極限状態で見た4人の女たちを描く「先導者」

南アルプス茶臼岳に降る雪が、本当に稀にうっすらと赤く見える時がある。

単独行の鹿島は、赤く見えるのは自分の体調のせいだろうと思い登っていた。

地元山岳会の大村会長は、大陸の黄砂が季節風に乗って日本にやってきて、

雪に混じると赤くなると。そしてこの赤い雪は、縁起のいい雪ではないという。

男と女が、仲間の男が雪崩に巻き込まれ死んだと急いで下山してくる。

ばったりと出くわした鹿島。それからミステリアスな展開を見せる「赤い雪崩」

八ヶ岳天狗岳には、生息していないはずの雷鳥の写真が地元の役所の観光課

に送られてくる。氷河時代の生きた遺産と言われる雷鳥。さっそく、捜索隊を編成

しての雷鳥探しが始まった。しかし見つからない。写真を送ってきた女二人の登山者

も、相次いで死亡する。観光課の関沢は、責任を感じ、休暇を取って、一人雪山へ

雷鳥の捜索に出かける「まぼろしの雷鳥」、他5編。☆☆☆☆

 

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あなたへ

あなたへ
著者:森沢明夫 発行所:幻冬舎

最近、鮎釣り関連の本ばかり読んでましたので、ご無沙汰です。

高倉健主演で映画化になり、現在上映中です。

刑務所で囚人に木工を教える作業技官の倉島。無口で口下手、地味な倉島。

明るくのびのびした性格のセミプロの童謡歌手洋子。

この二人が結婚したのが、倉島48歳、洋子38歳の時でした。しかし15年後の

洋子53歳の時に悪性リンパ種に侵され余命わずかという所から物語は始まる。

遺書で生まれ故郷の長崎の海に散骨を頼む洋子、自家製キャンピングカーで

富山の住まいから長崎へひとり向かう倉島。ひとりで旅に出た倉島に、様々な人

との出会いが訪れ、やがて一人で生きていく勇気が湧いてくる。

亡き妻からの手紙がもたらした感動の物語。☆☆☆☆

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さぶ

さぶ
著者:山本周五郎 発行所:新潮社

江戸下町の老舗表具屋の芳古堂に、住みこみで働くさぶと英二。男前で器用な英二、

愚鈍だが誠実なさぶ。この同じ齢のふたりの友情物語である。芳古堂の古くからの得

意先の両替商の綿文。毎年、英二も先輩職人と仕事に来ていて、綿文の家族からも気

に入られていた。そんな時、事件は起こった。綿文の旦那が大切にしている古金襴の切

が、英二の道具箱から見つかったのだ。まったく身に覚えのない英二、しかし、まわりか

らは段々と白い眼で見られていく様になる。店もやめ、やけっぱちになった英二は、揉め

事を起こして島送りになってしまう。英二と店を持つ事を夢見るさぶ、定期的に面会に訪

れるさぶだが、会おうともしない英二。やがて島で色々な事件が起こり、まわりの人に助

けられ成長していく英二。そしてついに島から出られる日が・・・。☆☆

タイトルが「さぶ」となってますが、どう考えても主人公は「英二」です?

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銀漢の賦

銀漢の賦
著者:葉室 麟 発行所:文藝春秋

江戸後期の寛政期、下級武士の子、源吾と小弥太は、同じ剣術道場に通う幼なじみ。

そこに百姓の子十蔵も仲間として加わる。年月が過ぎ、藩の重税に猛然と抗議する

十蔵ら百姓たち。藩で出世していた小弥太改め将堅が、十蔵を処分するこの一揆騒ぎ

をきっかけに家老職まで昇りつめる。仲間を処罰された源吾は、その事件から将堅に

絶縁状を送る。十蔵の妻子を女中として家に引き取る源吾。しかし、まっすぐ過ぎて出世

しない源吾は、苦しい生活をおくる事になる。藩で絶大な力を持つ様になった将堅、そこに

反対派から将堅暗殺の命が、源吾に下る。絶縁していたが、重い病で先の短い将堅の

本懐を知った源吾は、ある行動に出る。第十四回松本清張賞受賞作。☆☆☆☆

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銀漢・・・天の川

銀は金銀の銀、漢は羅漢の漢。天の川は漢詩では天漢、銀漢などで
表される。漢は男という意味ではなく、漢江すなわち大河のこと。

大往生したけりゃ医療とかかわるな

大往生したけりゃ医療とかかわるな
     「自然死」のすすめ

著者:中村仁一 発行所:幻冬舎

この本は、是非読んでもらいたいと思います。高齢化社会になり、莫大な医療費が

税金で賄われています。特に日本人は、すぐに医者にかかり過ぎであり、また医者

も無用な延命処置にかかわり過ぎであると警鐘を鳴らしています。

アメリカの学術誌には、「病気の80%は医者にかかる必要がない、かかった方が

良いのは10%強、かかって悪い結果になったものが10%弱」と発表されてます。

また、フランスでは、「老人医療の基本は、本人が食事を嚥下できなくなったら医師

の仕事はその時点で終わり、あとは牧師の仕事」と言われています。

また、北欧では、本人や家族が希望しても、改善する見込みのない胃ろうなどの

延命は医者が断るそうです。そこで、一番の治療法は、本来人間の持つ自然治癒力

であると力説されております。熱や咳、嘔吐や下痢など、異常を感じた体が、外に排出

して正常に戻そうとしている行為である。それを、すぐに薬や注射で押さえこんでは、

かえって治る時間がかかってしまったり、また自然治癒力を落とさせてしまっていると。

また、死ぬのはがんがいい、がんに限るとも主張されています。がんの治療法は、大きく

分けて3つ。手術、放射線治療、抗がん剤治療です。しかし、すべてのがん細胞を根絶やし

できなければ(ほとんどできない)、仲間を殺されたがん細胞が、暴れだして痛みとなって

表れると。共存して自然にまかせれば、痛みも少なく大往生できると説いておられます。

長年医者をやってこられ、現在、特養老人ホームの常勤医師として何十人の死を見守り、

今では確信を持てるとまで言われております。この本を読んで、昨年12月に亡くなった

オヤジの死に方は、あらためて良かったと感じました。まさに目からうろこの本です。

☆☆☆☆☆

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おもしろい違い言葉もありましたので、ご紹介します。

「死体」と「遺体」の違いは・・・家族が近くにいたら「遺体」いない時は「死体」

「棺(かん)」と「柩(ひつぎ)」は・・・「棺」に死体が入ると「柩」

闇の狩人

闇の狩人 上・下
著者:池波正太郎 発行所:角川書店・新潮社

40余人の盗賊集団・釜塚の金右衛門一家。その盗賊の三ヵ条の掟とは、

一つ、盗まれて難儀するものへは、手をださぬこと。

一つ、盗(つと)めするとき、人を殺傷せぬこと。

一つ、女を手ごめにせぬこと。

なにか、正当化した様な三ヵ条だが・・・ある時、首領の金右衛門が死ぬ。

小頭(No,2)の弥平次がこの物語の主人公である。跡目を人に任せ、愛人おしま

とのんびりと暮らそうとする弥平次、しかし、No,3とNo,4の凄まじい跡目争い

の中に巻き込まれていく。偶然に出会った記憶喪失の剣の達人弥太郎。

記憶を取り戻すために、金で人を殺める仕掛人となり、何年かぶりに再会した

弥平次と弥太郎。弥太郎も別世界の跡目争いに巻き込まれていた。

魑魅魍魎飛び交う江戸の暗黒街を描いた時代小説。

しかし、池波正太郎氏の作品にしては、悪いですが期待はずれでした。☆

闇の狩人 上.jpg闇の狩人下.jpg

上下巻をアマゾンで注文すると、上巻は角川、下巻が新潮社できました。
両社から出版されてますので、発行所が二つ書いてあります。

錯乱

錯乱
著者:池波正太郎 発行所:春陽堂書店

真田幸村の兄信之は、長寿で有名である。大殿と呼ばれた90代の時、息子信政が死ぬ。

この機会に真田家の乗っ取りに動く幕府側となんとか二歳の孫に継がすべき真田家との

暗闘が始まる。「錯乱」

武勇も優れ、戦功も数多い馬場主水。真田家の家臣である。ある日、百姓娘をはずかし

める。当時は、ほとんどが百姓サイドの泣き寝入りであった。しかし、この娘が、嫁入り前で、

その晩に自殺してしまい、庄屋が訴え出た。真田信之は、馬場主水を捕まえ、牢屋に入れた。

「俺の武功を考えろ、すぐに出せ」とわめき散らす主水。ついには、脱走して真田信之憎しで、

幕府に訴える。前年の大阪夏の陣の折、大坂方の幸村と共謀したとか、ある事ない事訴えで

たのである。しかし、老練な信之は、幕府の使者をも手玉に取ってしまう。そうして、肝心の馬場

主水の始末にかかる信之。信之が謀った主水殺害計画とか・・・。「碁盤の首」

日本人どうしの最後の戦争、西南戦争。明治政府を築きあげた西郷隆盛が、なぜ征韓論に傾き、

政府側と対抗していったのか、片腕として最後の最後まで西郷に仕えた桐野利秋を軸に描いた

「賊将」など五編収録。☆☆☆☆

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人情裏長屋

人情裏長屋
著者:山本周五郎 発行所:新潮社

主人公 松村信兵衛。信兵衛は浪人、十六店という裏長屋に住む。寝るとき以外は、

丸源という居酒屋にほとんどいる。つまり大の酒好きである。十六店という長屋は、

読んだ通り狭い家が16軒あるのだが、人の良い信兵衛は、なんと六軒分もの家賃を

払っている。この裏長屋は、お互いが助け合いひとつの家族の様な暮らしぶりだ。

お金がない者には、持っている者が、手が欲しい者には、あいている者が手助けして

暮らしている。他人様の家賃も払い、毎日酒も飲んで、いったい信兵衛は、なんで稼い

でいるのか。そう、信兵衛は素晴らしく腕がたつ。ふらっと道場に入り、「ご教授を賜りたい」

と「私は、何々で一度も負けた事はない〜」、すると大抵最初は門人と腕試しとなる。

これを、凄まじい太刀さばきであっという間に片ずけてしまう。それを見て、これは内心かな

わないと思っている道場主との対戦になる。しばらく構えあった後に、「まいった」と信兵衛は、

道場主に頭を下げる。これで、裏にまわってしっかりと小判の入った紙包をいただくというのが、

信兵衛の稼ぎである。道場主には絶対に勝たない道場破りである。ある日、その長屋に赤子

が残され、酒を断ち子育てする事になる人の良い信兵衛、さてその結末は・・・。☆☆☆

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山本周五郎について

直木賞受賞を、今まで唯一断わって受けなかった作家である。本名は、清水三十六(しみず さとむ)

13歳で質店の山本周五郎商店に丁稚奉公にでたが、関東大震災で解散。その後帝国興信所に入社

する。この帝国興信所が現帝国データバンクである。1903年(明治36年)に生まれ、1967年(昭和42年)

に亡くなるまで、数々の優れた作品を残されました。

銀しゃり

銀しゃり
著者:山本一力 発行所:小学館

十数年の修行ののち店を構えた新吉。題名が示すとおり鮨屋である。しかし、

今でいうマグロやハマチやウニやなどのメニューではなく、柿鮨一本である。

柿鮨と書いて「こけらずし」と読む。

四寸角(約12cm角)の鮨型に、鮨飯を半分敷く。その上に、しょう油で煮た

しいたけを細かく刻んで散らし、残り半分の鮨飯を詰める。その上に、鯛の刺身

や蒸しアワビの薄切りをのせて、錦糸卵を散らしてふたをする。重石をのせて型

押しすれば出来上がり。これが柿鮨である。旗本稲川家に勘定方祐筆として仕える

小西秋之助。武家にも柿鮨のお客になってもらおうと小西家に試食を届ける新吉。

これが縁となり、50代の武士秋之助と20代の鮨職人新吉の不思議な友情関係が

出来上がってゆく。☆☆☆☆

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蒙古の槍

蒙古の槍 孤島物語
著者:白石一郎 発行所:文藝春秋

5歳の孫の胸に突き刺さった赤樫の長柄に獣毛の朱房のついた長さ1間の槍。

高い樹の幹に縛られ投げ槍の標的となって死んでいった孫。その時から62歳

の漁師は、孫の仇を打つ目的のためだけに生き続けた。元寇。1274年鎌倉

時代中期、蒙古(モンゴル)襲来の文永の役。孫の胸に刺さった蒙古の槍を持ち、

復讐を果たすのが、7年後の1281年弘安の役である。約15万人、4400余艘の

大小の艦船が、神風(台風)により半数以上が溺死したと言われる弘安の役を描

いた表題の「蒙古の槍」

三重県伊勢湾の入口に答志島(とうし)という小島がある。ここに墓が二つある。

胴塚と首塚。天正六年六艘の甲鉄艦が、毛利の水軍を打ち破った二度目の石山合戦。

その船大将・九鬼嘉隆の墓である。関ヶ原で息子は家康に、嘉隆は三成についた結果、

家康に差し出された嘉隆の首。結局は、帰らなかった首であるが、二つの墓の所以で

ある。全長30m全幅9.5m、百挺櫓という大安宅船・日本丸船大将・九鬼嘉隆の晩年を

描いた「巨船」など七編の短編収録。☆☆☆☆

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あかね空

あかね空
著者:山本一力 発行所:文藝春秋

京都の貧農の三男に生まれた永吉。12歳で老舗の豆腐屋に奉公にあがる。13年が過ぎたが、

2〜3年で一人ずつのれん分けを許されても、永吉には、上に人がいてあと20年かかる。

わずかなつてを頼りに、江戸へ出る事を許された永吉。固い豆腐に慣れた江戸の庶民に、京都

の柔らかな豆腐の味を知ってもらうために孤軍奮闘する。同じ長屋の桶屋の娘おふみの励まし

で、何度も折れそうになる自分を奮い立たせる。やがて夫婦となった2人は2男1女の子宝を授かる。

しかし、長男ばかり溺愛するおふみに、しだいに夫婦仲も冷めていく。長い間苦労して貯めた半分近

くを賭場で負けてしまう長男。ついに永吉の怒りが頂点に達し、長男を家から放りだしてしまう。その

晩にめずらしく深酒をして荒れた永吉は、明け方に突然死してしまう。残された家族、おふみと次男が

豆腐作り、おふみがつれ戻した長男が外まわりで動きはじめる豆腐屋・京や。しかし、また長男が賭場

通いを始めてしまう事に。親子二代を描いた江戸下町人情物語。☆☆☆☆☆

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2002年第126回直木賞受賞作。

蒼龍

蒼龍
著者:山本一力 発行所:文藝春秋

一度この作者の本を読んでみたいと思ってました。第77回オール読物新人賞に輝いた

山本一力の原点「蒼龍」から読み始める事にしました。

 腕のよい指物師(家具職人)が、老舗の呉服屋近江屋の古い家具を直す仕事を請け負った。

指物師弥助の仕事ぶりに感銘を受けた近江屋の主人が、畑違いの呉服屋へ転職させ、さん

ざんに苦労を重ねながら「ひとつことに秀でた人は、畑が異なっても頭角をあらわす」という主人

の言葉通りになってゆく「のぶりうなぎ」

 大工の弦太郎。子供が生まれる時に、身内からと自身の賭博により莫大な借金を背負った。

 茶碗・湯飲みの新柄求むの貼り紙を見て、絵が得意な弦太郎は、この賞金に賭ける事にする。

妻のおしのも必死で応援する。最初の絵が、最終まで残り自信を持った夫婦が、2回目、3回目

の藍で描いた龍へと応募するまでを綴った「蒼龍」など他三編収録。☆☆☆☆

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「蒼龍」で多額の借金を背負った大工が、瀬戸物の大店の茶碗・湯飲みの新柄求むの貼り紙を見つめる。

貧乏庶民には、びっくりする高額な賞金。

作者山本一力氏も2億近い借金を抱え、46歳で作家に転身。それまでも様々な職種につき色々な苦労を重ね、

何度も何度も原稿を出版社に持ち込んでは、はねられた。まさしく、自分を大工・弦太郎に置き換えた「蒼龍」

で見事に新人賞を取り、53歳の時には直木賞を受賞する。

海王伝

海王伝
著者:白石一郎 発行所:文藝春秋

いや海狼伝はおもしろかった。その続編があると知り、急いで買ったのがこの「海王伝」。

立派な船を造り、船大将となった能島小金吾は、出船早々の海戦で死んでしまう。新たに

黄金丸の船大将となった笛太郎は、亡き小金吾の遺志を継ぎ、琉球・明国へ向かう。琉球

では商売にならず、また明国に入港するには数々の障害があり途方にくれる黄金丸。

その時、奴隷船から助けた男の案内でシャム(現タイ)へと渡った笛太郎たち。シャムに

渡っていた日本人と知り合い、徐々に商売をおぼえ、人間としても成長していく笛太郎。

バンコクを本拠地に活動する海賊マゴーチ。実は、一度も見たことのない笛太郎の実父で

あった。その父と宿命の対決をすることになった笛太郎。たった1艘の黄金丸対マゴーチ

率いる60艘との息詰まる海戦の火ぶたが切られる。☆☆☆☆

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海狼伝

海狼伝
著者:白石 一朗 発行所:文藝春秋

時は天正二年、日本中に戦乱の嵐が吹き荒れていた時代。信長が畿内で台頭してきた頃、

遠い遠い西海の対馬で生まれ育った少年の話である。

対馬、どちらかと言えば九州より朝鮮に近い島。ここで育った笛太郎という少年が、ひょんな

事から朝鮮帰りの海賊の仲間になる。ある時襲った船団に逆に返り討ちに合い、なんとか一命

はとりとめたが、捕虜となってしまう。それが、笛太郎と瀬戸内海を根城とする村上水軍との

出会いであった。能島小金吾という商才に長けた海賊の子分となり、縦横無尽に活躍する。

村上武吉も唸らせた黄金丸を作り、琉球・明へと向かう。

昭和62年第97回直木賞受賞作。☆☆☆☆☆

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対馬・・・淡路島より大きい島。全体の約9割が山林。昭和35年には約7万人の人口が、
     平成22年には、約3万4000人と半減に。ちなみに淡路島は、約14万3000人。

 

 

おせん

おせん
著者:池波正太郎 発行所:新潮社

この作家は、女性を主人公にしても実にうまい。そば粉と酒しか食べられないお園、

他の食べ物は一切受けつけない。他の食べ物を少しでも口にしたら、たちまち下痢

と高熱にうなされ死にかけるという異常体質。このお園が、そばをうち、大包丁を振り、

囲んで座る客にそば玉を放り投げて百発百中に、客の空になった椀に入れる。

その見事なまでの名人芸に客は遠方から詰めかけ店は大繁盛となる。しかし、性格

がわざわいして、店を転々とする。しかし、どの店もまた繁盛する。何件目かの店で

事件はおこる。浪人者に大切な右腕を切り落とされてしまうお園。死の床にあり、口に

したものは・・・。

江戸時代の一般的な女性のちょっとした出来事を中心に、さまざまな展開が楽しめる

表題作を含む十三の短編小説。☆☆☆☆

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おれは権現

おれは権現
著者:司馬遼太郎 発行所:講談社

可児才蔵(かに さいぞう)、槍の才蔵、笹の才蔵ともいう。福島正則の家臣で天下に武勇をうたわれた男。

関ヶ原のときに、首を一級も持って自軍に帰らなかったので、福島正則に「才蔵、首はどうした」と問われ、

「いちいち馬の鞍につけては働きが鈍るので、切り取った首の口に笹の葉を噛ませました」と答えた。

なんと兜首ばかり20級もあり、東軍随一の首級であり、人々を驚嘆せしめた豪傑である。才蔵は、

山城愛宕の勝軍地蔵またの呼び名を山城愛宕権現が、人間の体でこの世に出てきたのが自分だと

信じている「おれは権現」

加藤清正股肱の二大家臣飯田覚兵衛と森本儀大夫。15歳の時から清正に仕える二人。

その飯田覚兵衛の晩年を描いた「覚兵衛物語」

大阪城には、約1万人の女の人がいて、その全てが好いているとまでは言わないが、絶大な人気を誇った

美丈夫・木村重成。この時秀頼と同じ年の22歳。秀頼の乳母を母に持つ重成は、小さい頃から秀頼に仕え

ていた。この冬の陣が初陣となり、目覚ましい活躍を見せる。しかし、翌年の5月の夏の陣にて壮絶な最後

を飾る「若江堤の霧」など短編収録。☆☆☆

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男振

男振 (おとこぶり)
著者:池波正太郎 発行所:新潮社

 

いや、さすがに池波正太郎はおもしろい。なんでもない題材からどんどん読者を

引き込んでゆく力は素晴らしい。越後の筒井家十万石の世継ぎである千代之助に、

学友2人と仕える源太郎。15歳の源太郎に、なんと頭髪がすべて抜け落ちる奇病が襲う。

千代之助に侮蔑された源太郎は、なんと失神するまで千代之助を殴打してしまう。当然、

打ち首を覚悟した源太郎であったが、別人の名前を名乗って生きることを許される。

世継ぎを近習が殴るなどあれば、即刻打ち首となる時代である。実は、源太郎は主君の

血筋をひいていたことから、お家騒動に巻き込まれる。藩内の争いを抑えるため、源太郎は、

侍を捨て大工として生きる道を選ぶ。爽やかな男の生涯の話。☆☆☆☆

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金正日が愛した女

金正日が愛した女(北朝鮮最後の真実)
著者:落合信彦 発行所:角川春樹事務所

日本のテレビ局に突如もたらされた驚愕のオファー。

北朝鮮の自由取材と金正日の単独インタビュー。敏腕プロデューサー沢田は、

大取材班を率いて北朝鮮に乗り込む。今まで作り物しか見せさせなかった北朝鮮が、

食糧難で餓死していく市民を。また墓場と化した収容所を。戦意喪失した軍人を。

すべてに極限にまで達したすさまじい現状をオープンに取材させて行く。

今までにない軍部の協調性に戸惑いながらも大スクープに湧き上がる日本の大テレビ局。

一抹の不安が、だんだんと沢田の中で膨らんでくる。そこには、北朝鮮のある軍部と中国

が描いた壮大なシナリオが隠されていた。

ノンフィクションかと思わせるストーリー展開に一気読みした作品。☆☆☆☆☆

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盛衰の哀歌

盛衰の哀歌
著者:落合信彦 発行所:角川春樹事務所

1973年第4次中東戦争で、イスラエルに大打撃を与えたエジプトのサダトは大英雄となる。

しかし、イスラエル強硬路線から一転、イスラエルのベギンと和平交渉を成立させて、ノー

ベル平和賞を共に受賞する。かねてよりサダト信奉者であったカダフィは、イスラエルへ接近

した裏切者として、1981年陰でサダト暗殺を実行する。27歳という若さでクーデターを起こし、

リビアのトップになったカダフィ、禁欲的な青年将校が42年間の独裁体制で、(砂漠の狂犬)

(アラブの暴れん坊)と呼ばれる様なテロ支援国家になり最後には、同じ革命により命を落とす

「砂漠の狂信者」サダト暗殺を描いた「パワーゲーム」

ブレジネフやKGBにより1964年ソ連の最高指導者フルシチョフ失脚を描いた「落魄」の三篇収録。

☆☆☆☆

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黒幕

黒幕
著者:池波正太郎 発行所:新潮社

尼子氏の再興に執念を燃やす、偉丈夫山中鹿之助。中国の覇者毛利に何度も戦いを挑み、

何度も敗れ去ったが、常に先頭に立ち続け少数の尼子勢を奮い立たせた鹿之助34年間の

生涯を綴った「雲州英雄記」

山口新五郎が丹波国に生まれたのは、天文十三年。家康3歳の時である。病弱で、勉学も

武術もやらぬ、ただただぼんやりと居眠りばかりしている子供であった。ようやく出来た一人

息子が、このありさまと父親は悲嘆に暮れる日々であった。唯一の庇護者である母親が15歳

の時に亡くなると、忽然と姿を消した。丹波を離れ越後に居を移した父親のもとに新五郎が現

れた時は37歳になっていた。この新五郎が、家康のめぐらす謀りごとを実現すべく裏で働き続

け、関ヶ原の後、三成の息子重家の処刑を助け、江戸幕府開府後にようやく所帯を持つ事に

なった。なんと60歳を過ぎてからの事であった。この新五郎の生涯を綴った「黒幕」

真田信幸の家臣であった雨宮大蔵、戦場での経験もないまま文官として仕えていた19歳の時、

初めて遊女を買いに聞き、間違って舌を噛み切られてしまう。なんとか一命はとりとめたが言葉

を失ってしまった大蔵。信幸近習から長柄足軽に落とされた大蔵は、人知れず槍の稽古に励む

のであった。関ヶ原の合戦の初陣で、素晴らしい槍働きをして汚名をそそいだ大蔵であった。

しかし、信幸の弟幸村からの誘いで大阪勢に付き、幸村と共に命を落とす道を選ぶ「槍の大蔵」

などの短編収録。☆☆☆☆

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骨の記憶

骨の記録
著者:楡 周平 発行所:文藝春秋

高度成長期の昭和、岩手県の貧農の息子一朗が、集団就職で東京へ。

ひょんな事から職場の先輩が泊りにきていた時に出火、先輩だけが焼死したが、

自分が死んだ事となる。その先輩は、天涯孤独で、一朗が成り代わっても誰も疑

う者がいない。またその先輩が、千葉の田舎に土地を相続しており、それが成田

空港建設用地にかかり、多額のお金を手に入れた一朗は、運送会社を興す。

一朗には、消し去りたい過去があった。

小学6年の時に、町一番の金持ちの息子弘明と二人で抜け穴を秘かに掘り進めていた。

2人が思いを寄せる同級生の清枝の父親である杉下先生と抜け穴掘りの現場で出

くわしてしまう。こんな危ない事はするなと怒られて、穴を埋めにかかった時に事故で

杉下が埋まってしまう。事故とはいえ、先生を生き埋めにして知らぬ存ぜずを決め込

んだ一朗は、むしろ進んで他人へと成り代わってしまう。二部上場の運送会社に育て

上げ、莫大な私財を築きあげた一朗だが、家族には恵まれない。

清枝と結婚した弘明は、先代からの財産を食いつぶして、老齢に入り病に苦しむ。

しかし、献身的に務める清枝の姿がそこにあった。そして癌に侵された一朗は、

お金はないが、夫婦愛のある弘明や財産目当ての二度目の妻への復讐を始める。

なかなか読みごたえありの傑作! ☆☆☆☆☆


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伊賀忍び控え帖

伊賀忍び控え帖
著者:津本 陽 発行所:PHP研究所

帰ってきました戦国物に。以前、大好きな池波正太郎氏の忍者シリーズを楽しみに読んでました。

実は、忍者好きで、甲賀の里忍術村伊賀忍者博物館なども訪ねています。

時は、永禄(1558年〜1570年)、一度行けば、その後にどんな状況になっていくか瞼の裏側に

浮かび上がってくるという「天眼通」、人の心を読む「他心通」など、人間離れした技を使い、その当時

台頭する信長や松永弾正を手玉にとる伊賀忍者・遠山太兵衛の活躍を描く歴史長編。

☆☆☆☆

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蠅の帝国

蠅の帝国 軍医たちの黙示録
著者:帚木 蓬生 発行所:新潮社

閉鎖病棟がおもしろく、著者の作品を探していて、この蠅の帝国を買った。

第二次世界大戦の中、若き軍医15人が極限状況下で見た悲惨な戦争の姿を日本各地

や樺太、満州での体験を通して綴った15話となっています。

2話「蠅の街」では、広島に原爆が落ちた後に調査に入る軍医。

原爆投下後からあまりの蠅の多さに驚かされる若き軍医。両の肩どころか、前を歩く人の

汚れたシャツの背が、蠅で真っ黒になっている。蠅が、生きている人間に卵を生みつける。

それがウジとなり筋肉の間を這い回る。そして痒い痒いと死んでゆく。蠅は、いずれ死にゆく

人間を見分けているのだという恐ろしい話など。 ☆☆☆

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閉鎖病棟

閉鎖病棟
著者:帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)
発行所:新潮社

山本周五郎受賞作。
現役精神科医の作者が描いたある精神病棟。重い様々な過去を引きずり、
年齢もバラバラな患者たち。通院で陶芸室にも通う島本さんが、みんな
のマドンナである。
覚せい剤中毒で殺人をおかした元暴力団の重宗、辺りかまわず暴力を振い
病院中に恐れられている。その重宗が次に触手を伸ばしたのが島本さんで
あった。島本さんを娘の様に可愛がっていた秀丸さんは、不自由な体を
押してついに復讐に立ち上がる。
平凡な日常を破った殺人事件が、やがて患者の自立へと導いてゆく感涙
の結末が・・・。     ☆☆☆☆

閉鎖病棟.jpg

深夜食堂

深夜食堂
安倍夜朗 小学館コミック

豚汁定食 600円
ビール(大)600円
酒(2合)  500円
焼酎(1杯) 400円
酒類はお一人様三本(三杯)まで

これが、深夜12時から朝7時頃まで営業の深夜食堂のメニューである。
あとは、客が勝手に注文すると、出来る範囲で作ってくれる。
ヤクザの竜は、赤いウインナーを注文、するとタコの形にして大盛り
で出してくれる。高校球児の時の思い出に浸り、感激して味わう竜。
釣りはいらないと万札をカウンターに置いて帰る竜。
長年ゲイバーで働いている小寿々は、甘い甘い卵焼きが好物。
隣でタコウインナーを食べている竜と卵焼きを少し交換するのが楽しみだ。
朝方に来て猫まんまを注文する売れない演歌歌手みゆき。
30女3人ミキ・ルミ・カナは、うめ・たらこ・しゃけと必ず同じお茶漬け
を食べながら男の話で盛り上がる。マスターは、秘かにお茶漬けシスターズ
と命名している。等々。
ごく身近な料理に、様々な思い出を持ちこんで深夜食堂に訪れる客たち。
注文された料理を、自分流に素朴に黙々と作る顔に傷あるマスター。
このコミックがヒットしてドラマ化となり、味のあるマスターを小林薫氏が
演じている。木曜深夜に放送されています。

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妻と最後の十日間

妻と最後の十日間
著者:桃井 和馬 発行所:集英社

この大地に命与えられし者たちへ
写真・文:桃井 和馬 発行所:清流出版

41歳の妻が、ある日突然くも膜下出血で倒れた。世界各国140ヵ国を取材して、多くの死を身近で見続けてきた夫。

しかし、突然に若い妻が職場で倒れ、回復の兆しがなく、脳死に陥る妻を前に、動揺して取り乱すだけの夫。

やがて、少しずつ冷静さを取り戻して、「その瞬間」までを詳細に記録する事で、現実と向き合う覚悟をきめた夫

である著者。この記録は、写真家でありジャーナリストである著者が、もてるすべての知覚を振り絞って克明に

記録し続けたものであり、あまりの詳細さに、あたかも自分が集中治療室にいる様に錯覚するほどで、胸を打って

やまない。小学校6年生の一人娘が、母親が倒れたショックで、失語と吃音がひどくなってゆく。

しかし、最後の10日間にこの娘さんが、物言わぬ母親と会話する事により、力強く成長していくのには、ただただ

驚かされる。

この本を買う前に、たまたま購入した写真集が、この著者の2007年に発行したものでありました。

カンボジアのポルポトの軍事基地跡やポーランドのアウシュビッツ、サラエボ、チェルノブイリ、フィリピンで

第二次世界大戦時、三万人が犠牲となった「バタアン死の行進」を経験した老人たち、など世界数十カ国の写真

と解説が収められています。

その最後に出版に際しての謝意に、妻へ、娘へと書かれていたのが印象的でした。

妻と最後の〜.JPG     この大地に〜.JPG    

神君家康の密書

神君家康の密書
著者:加藤 廣 発行所:新潮社

加藤廣氏の三部作からなる新刊である。
秀吉の側室といえば、淀となるが、それは秀頼をなしたからであり、最も寵愛を
受けた側室といえば、西の丸と呼ばれた龍子である。龍子の兄であり、淀の妹の
初の亭主である京極高次の話を綴った「蛍大名の変身」
博多の若き豪商 島井宗室。天正二年、信長と初対面した宗室。
その時に献上した高麗茶碗、翌天正三年、越前四十九万石へと出世した柴田勝家
への祝いとして贈られたこの高麗茶碗。賤ヶ岳で敗れ、北の庄城で最後に市と
高麗茶碗で茶をたしなむ勝家。形見分けとして茶々に渡され、その後家康の家臣
青山忠成に渡る。明治時代になり、井戸茶碗「柴田」と名がついた高麗茶碗は、
現在の時価で三億以上の値段で落札された。日本歴史上最高の値段のついたこの
「柴田」を綴った「冥土の茶席 井戸茶碗「柴田」由来記」
尾張二十四万石清州城主福島正則の話。上杉討伐で東へと軍を進める徳川家と豊臣家
恩顧の大名たち。三成ら西軍挙兵の報を受け、正則に一芝居頼む家康、秀頼安泰の
起請文を要求する正則。関ヶ原の後、安芸・備後四十九万石の大大名へと昇る正則。
しかし、加藤清正、池田輝政、浅野幸長など旧豊臣家の仲間の不審死。最後の一人
となった正則に、領土没収、津軽四万五千石に移住の宣告。
結局、家康の起請文は口約束で、正則の手に渡る事はなかった「神君家康の密書」
以上の三部作である。 ☆☆☆

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京都おつつみ手帳

京都おつつみ手帳
発行所:光村推古書院

簡易包装と中の商品がむき出しで包装されている事が、美徳化される傾向があります。

紙屋だからではありませんが、包み紙やパッケージは、より中の商品を際立たせる重要

な脇役だと思います。その包装紙やパッケージを見ただけで、中身を想像して、また一瞬

味まで感じてしまう様な工夫やデザインがほどこされてあります。京都ならではの包装紙・

パッケージ・紙袋、また店舗の地図なども掲載されています。手の届く所に置き、ちょっとした

空き時間に眺める格好の一冊をご紹介します。

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謙信の軍配者

謙信の軍配者
著者:富樫 倫太郎 発行所:中央公論新社

早雲の軍配者、信玄の軍配者に続くこの謙信の軍配者で、軍配者の三部作が完結となります。

早雲〜が風魔小太郎、信玄〜が山本勘介そしてこの謙信〜が、曾我冬之助改め宇佐美定行が主役となります。

戦国大名で一番戦に強いのは誰か、信玄?信長?秀吉?真田?島津?間違いなく上杉謙信が一番であると思

われます。この時代の戦は、常に大将のいる本陣を最後尾に置き、何としてでも大将を守ろうとする陣立てが常識

であり、常道でありました。しかし、この謙信だけは「毘」の旗をたなびかせて先頭を走り、怒涛の勢いで敵陣に食

い込んで行くという、およそ兵法の常識からかけ離れた戦法で勝ち続けました。おのれは、「毘沙門天の化身」

と思っているから、矢も鉄砲も当らないと。ともかく戦には滅法強く、戦場での勝負所も抜群の勘を持っており、

軍配者が必要なのかという話になってしまいますが。

謙信は、まったく他の戦国大名と比べられない性質ももっており、一言で言えばまったく欲がない、無欲といえます。

わずかな土地で家臣たちが争うと、越後を捨て高野山に出家したり、裏切り者には、この時代凄惨な仕打ちが

常識であったものが、罰ひとつ与えず許してしまったり、戦に勝っても領土をなにひとつ広げなかったりと。

およそ規格外の武将でありました。その謙信に惚れ込み共に戦う軍配者冬之助、ついに第四次川中島で

宿敵勘介との最後の戦いが始まる。 ☆☆☆☆

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見知らぬ海へ

見知らぬ海へ
著者:隆 慶一郎 発行所:講談社

へぇー!!ウソだろ! という始まり。戦国末期、籠城している城から、

裏の海へ気晴らしに好きな釣りに出かける向井正綱。なんとその間に

敵の攻撃を受け父と兄をはじめ全軍を失ってしまう。

釣り好きの私には、まことに耳の痛い出出しである。若き主人公正綱は、

父の残したわずかな水軍の跡を継ぐ。魚釣り侍と揶揄されながらも訓練

を重ね、巨大な北条水軍と互角に戦ってゆく。しかし、武田勝頼配下の

水軍であったので、肝心の勝頼が織田・徳川連合軍に敗れてしまい主を

失ってしまう。父・兄の仇の徳川につくか、さんざんに戦ってきた北条につ

くか選択を迫られる正綱。そして徳川傘下に入る決断をして、やがては家康

をも唸らせる徳川水軍の長として頭角を表してゆく。海の男の物語。☆☆☆☆

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鬼麿斬人剣

鬼麿斬人剣
著者:隆 慶一郎 発行所:新潮社

大太刀をまっすぐ振り上げる。腹をつきだすようにして身体をくの字に反らせる。

腕は思いきり後に振りかぶる。足は肩幅と同じ間隔に真横八文字に開く。

鬼麿の大太刀は、三尺二寸五分(通常は二尺三寸)、この刀の長さと柄の長さ、

それに己(身長六尺五寸197p・体重三十二貫120s)の腕の長さを加えた距離

で円を描き、その内に入ってくるものは、ことごとく斬る。人も刀も石も鉄も瞬時に切り裂く。

名刀工清麿を師と仰ぎ、死に際に鬼麿に頼んだ己の駄刀の処分。中山道や丹波路など

師の足跡を追い、ことごとく駄刀を叩き割る。

異色の巨漢ヒーローが、繰り広げる痛快斬撃アクション八番勝負! ☆☆☆

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奔る合戦屋

奔る合戦屋
著者:北沢 秋 発行所:双葉社

哄う合戦屋で、小説家デビューを飾った北沢秋氏の第2弾。素晴らしい小説家が出て、

おまけに私の好きな戦国時代ときて、第2弾を心待ちにしていました。

前作の主人公石堂一徹の16年前天文二年1533年19歳という舞台からの始まりです。

信濃の大豪族村上義清を大将に仰ぐ、桁はずれて文武両道に優れた六尺二寸(188p)

の巨漢19歳の一徹、信玄は12歳、信長にすればまだ生まれていない年である。

二度も武田を撃退した猛将村上義清、常に戦陣では先頭を走り、正面からぶつかれば、

あの信虎・信玄親子でもかなわない程のいくさ上手である。

恩賞や立身出世を求める気持ちがなく、名参謀張良、孔明を崇拝して、まずは信濃の国主

に義清を就かすべく孤軍奮闘する一徹。しかし、なまじいくさに強いばかりに、しだいに一徹

の助言が重たく感じるようになっていく義清。

飛び抜けた才能を持った家臣を持て余す主君、やがて悲劇は始まる。

間違いなくexclamation×2 ☆☆☆☆☆

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死ぬことと見つけたり

死ぬことと見つけたり(上・下)
著者:隆 慶一郎 発行所:新潮社

佐賀鍋島藩の斉藤杢之助、死人として生きる典型的な「葉隠」武士。
島原の乱では、中野求馬と一番乗りを果たす。
しかし、鍋島藩の解体を目論む老中松平信綱からは抜けがけとみなし、
弾圧が始まる。杢之助、求馬と巨漢萬右衛門の葉隠武士三人衆が、
鍋島藩救済へと立ち上がる。殿に諫言して喜んで切腹した父を尊敬し、
自分も同じ道を切望する中野求馬。諫言するには藩で出世しなければ
ならない。親友求馬をあらゆる側面から応援する杢之助と萬右衛門。
死ぬ事に何の恐れも不安も持たない強靭な精神力を持った葉隠武士の
活躍を描く、間違いない大傑作! ☆☆☆☆☆
ひとつ残念な事に、著者 隆 慶一郎氏が平成元年に急逝したことによ
り、未完のまま終わっている事です。

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葉隠とは、肥前国鍋島藩藩士 山本常朝が武士道として説明した言葉を
田代陣基が筆録した記録。

「武士道の根本は、死ぬことにつきると会得した。死ぬか生きるか
 二つに一つという場合に、死をえらぶというだけのことである。」
冒頭、最初の一文がこれです。

 

影武者 徳川家康

影武者徳川家康(上・中・下)
著者:隆 慶一郎 発行所:新潮社

まさか家康が、影武者のはずがないではないか!いいかげんな!と思いながら
読み始めた。関ヶ原で島左近の刺客により死亡、10年来の影武者が、家康にな
り代るという話。確かに、大坂夏の陣が1615年、なんと関ヶ原から15年も後は
おかしい。また二代将軍秀忠が、他の書物では大方が線の細い頼りないという
イメージで描かれているが、冷血無残、目的のためには手段を選ばない、酷薄
極まる男に描かれている。秀忠は三男、長男は、信長の命により切腹させられ
た信康。次男は、秀吉に人質に出され結城家へ養子となった秀康、しかしこの
秀忠より五歳上の秀康も34歳で変死。一歳下の四男忠吉も28歳で変死。
四歳下の五男信吉も21歳で死亡している。徳川家の跡取り候補が、秀忠以外見事
なまでに変死をとげている。
一時期、学研M文庫から出ている異説物が好きで読みふけった事がある。これ
は、関ヶ原で三成が勝ったならこうなったとか、信長が朝鮮に攻め入るとか、
信玄や謙信の寿命を延ばしたり、ことごとく歴史を歪曲しておもしろおかしく
展開した話である。しかし、このストーリーを考えるには、膨大な事実資料と
知識がなければ書けないおもしろさもある。しかし、この影武者徳川家康は、読
み進む内に、これが真実であったのかと思わせる見事な説得力を持っている。
秀頼は、秀吉と淀の子供となっているが、史家で誰一人秀吉の子供と思って
いる人はいない。以前も紹介した信長の遺体が出ない謎と秀吉の中国大返しの
絶妙なタイミングなど。現在伝わる歴史の中でも随分と真実からかけ離れた事が
、さもあたり前にあった様に伝わっている。家康を暗殺した甲斐の六郎という忍び
と指図した島左近が生き残り、今度は逆に秀忠から影武者家康を護る。
15年間を家康として颯爽と生き続けた影武者を鮮烈に描いた隆慶一郎渾身の一作。
☆☆☆☆☆

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城壁

城壁  もう一つの文禄・慶長の役

著者:金永 治雄 発行所:国書刊行会

秀吉晩年の最大なる愚行「朝鮮出兵」。朝鮮南部の重要拠点である晋州城。二度にわたり繰り広げられた死闘。

1592年(文禄元年)10月、細川忠興ら2万人で3800人で守る晋州城を攻めた第一次攻防戦。避難民や援兵に

より守り切り、日本軍が敗れた戦い。翌年6月、秀吉厳命により日本軍総がかり、宇喜多秀家を大将に、なんと

9万2000人もの大軍勢で攻めかかった第2次攻防戦。

この2回の攻防戦を通した物語である。ただ、副題に「もう一つの〜」とある様に、有名武将や日本側からの話で

はない。清正の荷役として朝鮮に渡った3人の百姓、新天地に夢を求め渡ったが、現実は無益な殺生の繰り返し

に、降倭(朝鮮側に寝返る)となり、日本軍と戦うという展開である。その当時の朝鮮の生活や習慣やしきたりなど

が、随所でちりばめられて興味深く、タイトルの城壁を守り切ろうと奮闘する兵とあらゆる手段を使い乗り越え様と

する兵との息詰まる戦いに夢中となり読み終えた傑作である。☆☆☆☆☆

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求天記

求天記 宮本武蔵正伝
著者:加藤 廣 発行所:新潮社
 

週刊新潮の広告を見て、すぐに申込みました。新たな宮本武蔵像でした。

17歳で関ヶ原に西軍として参戦、 28歳で小次郎と対決。細川家剣術師範で切支丹信者の小次郎を

どうしても葬り去りたかった細川家、その策謀にまんまと乗せられた武蔵。

その後諸国を旅したり、いくつもの諸藩に仕えたりしながら剣の奥義を極めてゆく。

62歳で没するまで、 剣に、水墨画に、仏像彫りにと、自由奔放に生きた武蔵の生涯を綴った作品。
☆☆☆☆

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国宝の瓢鮎図(ひょうねんず)の部分画妙心寺 退蔵院所有 如拙作

中央に漁師が、瓢箪壺を持って少し前に屈み、ナマズ(漢字では「鮎」と書く。「鯰」は日本で作った漢字)をどう捉えるか思案している図。この画の解釈を愚堂(臨済宗の高僧)が武蔵に説く場面がおもしろい。「あんなの小さい瓢箪で、図のナマズは取れない。考えすぎるなということ。瓢箪は流されぬよう岩にでも括り付けて放っておけ。 小さいナマズが中に棲むこともある。んでいてナマズが大きくなり出られなくなったら悠々と引き上げろ。 ナマズが棲ねば諦めよ。それだけのことよ。ナマズの代わりにウナギやアユが紛れ込めばけもの。さっさと食して、また瓢箪を沈めておけばよい。人生という瓢箪には、時折思わぬ物が流れ込んでくる。金・地位・名誉・権力など、 そのどれもこれも流れゆく 水の戯れに過ぎぬと。要らぬ物は捨て、食える物は食うなにごともため込むと人生瓢箪は詰まって役に立たなくなる。」

(本文より省略抜粋)

虚けの舞

虚けの舞(うつけのまい) 織田信雄と北条氏規
著者:伊東 潤 発行所:彩流社

朝鮮出兵の折、最前線の肥前名護屋で出会った二人。

信長次男信雄と関東の覇者北条氏康の五男氏規が主人公。

信雄は、本能寺の変の折、安土城に入りながら何も出来ず、みすみす秀吉に全てをさらわれた。

また清州会議後百万石の領土を手に入れ家康と組み、小牧・長久手で秀吉と戦い、これも中途半端に

和睦して領土も取られもっとも天下取りに近い血筋で、もっとも天下取りに動ける領土を持ちながら

失敗の数々を築いた虚けの信雄。

北条討伐へと空前の22万の大軍勢を押し立てる秀吉。信雄を総大将に、福島、細川、蒲生、蜂須賀勢

の大軍で韮山城を攻めるが、見事少数にて防ぎきる氏規。天運に恵まれながらも器量に恵まれなかった

信雄、器量には恵まれた天運に見放された氏規。

この対照的な両者の生き様の物語である。☆☆
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戦国奇譚 惨

戦国奇譚 惨
著者:伊東 潤 発行所:講談社

「戦国奇譚 首」がなかなかに面白かったので、続編ともいうべきこの惨を
読みました。武田家滅亡に翻弄された人々がいかに生き、また死んでいった
か。英雄の陰に隠れた人たちにスポットをあてた短編集である。

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武田方の木曽義昌が、母親・息子や娘まで勝頼に人質に取られながら信長に
寝返った苦悶を描いた「木曽谷の証人」
裏切りにつぐ裏切りを描いた信濃国の最前線に位置する下條家を描いた
「要らぬ駒」
武田逍遥軒こと信廉、武田信虎の六男であり、信玄とは同腹の弟として
武田家中枢を担う一軍の将であったが、信玄亡き後勝頼に疎んじられ、
復権を狙う信虎を誅する役を担ってしまう「画龍点晴」
信玄五男の仁科五郎盛信。幼き時、武田家に生虜にされた信長五男の源三郎。
恋仲となった盛信と源三郎。武田家最後の防衛線高遠城籠城にからむ二人の
秘めた謀とは・・・「温もりいまだ冷めやらず」
勝頼の片腕と目されていた信玄娘婿の穴山信君。信君の離反から急速に滅ぶ
武田家。家康との安土・京・堺への旅。本能寺の変の前に信君へ下された信
長の命とは・・・「表裏者」  以上五編です。      ☆☆☆☆

南海の翼

南海の翼 長宗我部元親正伝
著者:天野 純希(あまの すみき)発行所:集英社

四国の雄 第21代当主長宗我部元親の生涯を綴った物語である。
姫若子と呼ばれ、あまりにも軟弱でひ弱であり、弟に家督をと
考えられていた元親が、22歳での初陣で活躍して家督を継ぎ、
度重なる合戦の末に土佐統一を成し遂げる。
信長に誼を通じ、嫡男信親に一字も賜り、四国切り取り自由の
許しを得て、四国統一に動き出す。しかし、信長が言を翻した
事から敵対関係となり、織田軍の四国渡海の前日に本能寺の変
が起こる。元親に追い風が吹いたが、その後の秀吉への降伏、
九州遠征での嫡男信親の戦死、4男盛親への家督相続に絡むお家
騒動など、後半生は、向い風を受け61歳の生涯を閉じる。

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元親の死後、関ヶ原で西軍に付いた長宗我部は、土佐を山内
一豊に取られ、その後の大坂の陣で敗れ、お家断絶となった。

☆☆☆

戦国奇譚 首

戦国奇譚 首
著者:伊東 潤 発行所:講談社

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幼馴染が深手を負いながら取った大将首を横取りした「頼まれ首」
味方のそれも大将の息子の首をあげてしまった「間違い首」
勇猛な武者の摩利支天への信仰心がゆえの「要らぬ首」
4人もの雑兵首を取ってからの数奇な運命の「雑兵首」
死が目前に迫った友から頼まれた事により運命を共にする「もらい首」
首実験の場で言い争う事になった親子の「拾い首」

以上の様々な首談話が六篇収録された大変読みやすい一冊です。

☆☆☆☆ 

父は特攻を〜

父は特攻を命じた兵士だった。
人間爆弾「桜花」とともに
著者:小林 照幸 発行所:岩波書店

先日読んだ「永遠の0」に感銘して、本屋で関係書を探していたら、この本が目にとまりました。

ノンフィクションであり、余計に身につまされて読みました。海軍の伝説男野中五郎少佐が、

この桜花の初陣にあたり、部下だけ行かせられないと、一式陸攻に乗り込んだ。前夜、その

野中少佐が、林大尉に「これがいかに無謀な作戦であるか、自分の命をかけて上層部に示す。

君は、この特攻を今後止めてくれ」と言い残したとある。その言葉通り桜花15機、

一式陸攻18機、擁護戦闘機30機すべて未帰還、160人が戦死となった。しかし桜花の出撃は止まず、

23歳の林大尉は、出撃者を黒板に選んで書き出すつらい職務をこなすのであった。

父は特攻を〜.jpg 桜花.JPGJapanese_Ohka_rocket_plane.jpg

桜花とは、全長約6m、主翼幅約5.1m、高さ約1.2m、重さ約440キロの超小型戦闘機。
桜花自体で空を飛ぶことはできない。機体の約3倍の1.2トンの爆弾を機首に乗せ、
7人乗りの一式陸上攻撃機を母機として運んでもらい、敵艦の近くで切り離され、
敵艦に体当たりする。命中すれば、零戦が3機体当たりするより威力があり、空母
や大型の戦艦を撃沈する事が可能であった。この桜花の出撃にあたり、帰れぬ乗員
を選び、黒板に書きだす職務を担った林 冨士夫大尉の話である。
この桜花の水平最大時速は、650キロだが、動きの鈍い一式陸上攻撃機ごと撃ち落
され、瞬時に8人の命が奪われる事が多かった事が、多くの悲劇を生んだ。

(余談)

林 冨士夫という名前は、日本の象徴である富士山に因んでいる。富のウ冠ではなく
冨のワ冠にしたのは、いかにも軍国思想を反映していた。というくだりがある。
人が登って初めてテンが付いて冨士は富士になるという考え方に基づき「勉学に励み、
身体を鍛えて日本一の男児になれ」の願いを込めたものであった。

☆☆☆

空白の桶狭間

空白の桶狭間
著者:加藤 廣 発行所:新潮社

「人間五十年下天の内をくらぶれば夢幻の如くなり。
 ひとたび生を得て滅せぬ者のあるべきか」謡曲「敦盛」
を舞うと湯漬けをかき込み、馬にまたがり単身城を飛び出す。
あわてた家来が、後を追い熱田神宮で必勝祈願をして、徐々に
集まりだした家来と、義元の本陣めがけて奇襲をかけた。という
筋があまりにも有名である。しかし、本能寺の変と同じで、非常
に謎に包まれた桶狭間の戦いである。後世に伝わる義元像よりも
はるかに今川義元は慎重で優秀であった。なぜ進軍経路からそれた
桶狭間山で陣をはったのか。なぜ義元の首を取った服部小平太・毛利
新介の論功行賞が少量の砂金だけなのか。著者ならではの斬新な
角度から桶狭間の戦いの真相を綴った一冊である。 ☆☆☆

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安土城の幽霊

安土城の幽霊 「信長の館」異聞録
著者:加藤 廣 発行所:文藝春秋

たまたま、アマゾンを見ていたら、本能寺三部作の加藤廣氏の著作が目にとまり、
すぐに発注しました。氏にはめずらしく短編集の三篇で構成されています。
22歳になった針売りの秀吉が、今川領から尾張の生駒家へ奉公に行く。その離れに
子を連れて戻った主の妹が住んでいた。名は吉乃といい、そこに足繁く通っていた
のが25歳になる信長であった。秀吉と信長の出会いを綴った「藤吉郎放浪記」
信長は、その吉乃の娘多志を強引に「山陽道の虎」と恐れられていた荒木村重の
後妻に押し込んだ。形の上では信長の娘婿になる村重が謀反した。村重の一族郎党
約500人を蒸し焼きに、多志と待女十数人は、京を引き回されて、六条河原にて打ち首
となった。この多志の幽霊が安土城に出て信長を苦しめる「安土城の幽霊」
足利三代将軍への明からの贈り物として海を渡ってきた小壺。足利義満・山名政豊から
朝倉家へ。梟雄松永久秀の手に渡り、信長への献上品となった。この頃には小壺が、
天下壺やつくも茄子と呼ばれる様になっていた。秀吉から淀へ、そして大阪夏の陣で
粉々に砕け、複製して家康へ。藤重家をへて、三菱財閥創始者岩崎弥太郎の弟弥之助
へと伝わってゆく。数奇な運命をたどり歴史を見つめてきた小壺の「つくもなす物語」☆☆☆
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永遠の0

永遠の0(ゼロ)

著者:百田 尚樹 発行所:講談社

終戦から60年の節目に、零戦に乗って命を落とした祖父を調べる健太郎。

戦争体験者から話を直接聞ける最後の時期。最初に出会った戦時中の祖父を知る戦友

からは、思わない言葉が。「奴は臆病者で、生きて帰りたい」が口癖だったと。

気が重くなるスタートだったが、何人もの人と話すうちに徐々に祖父宮部久蔵の素晴らし

さがわかってゆくというストーリーである。

永遠の0というタイトルは、太平洋戦争中、日本が世界に誇る名戦闘機としてその名を

轟かした海軍零式戦闘機、つまり「零戦」のことである。

戦争当初は無敵の零戦であったが、18年から零戦の性能をはるかに上回るグラマンF6F

、シコルスキーを大量投入してくる米国。

現場の者は誰もが、この無謀な「特攻」に疑問を持ちながらも、国のため、愛する人を

護るためと出撃していった。しかし米軍は、電探でいち早く見つけ、多数の戦闘機で

待ちかまえ、片っ端から撃墜してゆく、たまたま数十機に一機が突破できても、

今度はものすごい対空砲火の嵐が待っている・・・・・。

特攻作戦を指揮した多くの士官が「お前たちだけを死なせはしない。自分も必ず

後を追う」と。しかしそう言った連中の中に、後を追う者はほとんどいなかった。

終戦間際に、特攻にひとり抵抗していた宮部が、特攻で散る。その無念たるやいかばかりか。

戦友から話を聞いているうちに、様々な記憶の断片が揃う時、明らかなる真実が浮かびあがってくる。

最後は涙なくして読めない結末へと。私が読んだ十本の指に入る名作である。

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R-40本屋さん大賞1位・・・週刊文春の企画で、ベテランの本屋さん(40歳以降)が選んだ文庫部門の第1位。

☆☆☆☆☆

真相

真相
著者:横山秀夫 発行所:双葉社

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本屋に行き、平置きされていて、帯にドラマ化・映画化とあるとやはり目につく。
あまり現代版ミステリーは読まないが、ドラマ化の帯で読んでみた。
息子を殺された男が、十年ぶりに逮捕された犯人の自供から、別の顔を持った息子
を知る「真相」、村長選挙にでた男が、絶対に当選しなければならない理由が隠され
ている「18番ホール」、リストラされた男が、アルバイトで睡眠障害の薬物実験を
して、不眠症になっていく「不眠」、大学空手部の新人6人が体験した地獄の合宿、
ついに仲間の一人が死ぬ、その後のそれぞれの人生と死の原因が絡み合う「花輪の海」
強盗致傷の前科のある男が、情報社会の中で拭い去れない過去を引きずり行き場を
失った折、養子縁組を言い出した一人住まいの老人。そして以外な結末が・・・
「他人の家」の5編収録。

太平洋の奇跡

太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男
著者:大石直紀 発行所:小学館

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ドン・ジョーンズの長編実録小説『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』が原作。

サイパンに圧倒的軍事力で完全占領をめざすアメリカ軍に、敢然と立ちはだかった誇り高き男大場大尉。

一年半の間、民間人を含む200人の日本人の命を守り、敵対国のアメリカからフォックスと呼ばれ畏れられ、

最後には英雄視された。まだ映画は観ていないが、大場大尉を竹野内豊が、またサイパンタイガーと呼ばれ

怖がられた堀内一等兵を唐沢寿明が演じている。今の民主党議員に是非読んでもらいたい一冊である。 

S.S

 

 

明智左馬助の恋

明智左馬助の恋(上・下)
著者:加藤 廣 発行所:文藝春秋

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当時、秀吉と光秀の所領を二つ足すより大きい50万石の太守荒木村重の謀反。
信長の命令により、長女綸を村重の長男村次に嫁がせている光秀に村重説得の下知
が下る。村重説得に失敗した光秀、次いで病の竹中半兵衛が説得工作に出向き失敗、
これにより寿命を大幅に縮めた半兵衛。そして黒田官兵衛は、牢獄にいれられる。
度重なる失敗が、のちに逃亡した村重の有岡城の足軽・小者・女子供にいたるまでの
全員処刑への地獄絵図となる。信長の義理の娘で村重の妻・多志も例外ではなかった。
多志に助けられた綸を坂本城に連れ帰った光秀、両参謀を奪われた秀吉、お互いが
従順な家来から信長を見る目が変わっていく上巻。
本能寺襲撃を終え、左馬助率いる2000がしらみつぶしに探すが、信長の遺骸が出ない。
そこへ、阿弥陀寺の清玉上人から信長の遺体の相談を受ける左馬助。隠された安土城
の天守閣のからくり、改めて天才信長の深慮遠謀を知った左馬助。安土城で光秀の敗戦
を聞き、有名な湖水渡りで坂本城に戻った左馬助は、明智家の壮絶な最後を飾る。
本能寺の謎が解き明かされる本能寺三部作の完結編。

秀吉の枷

秀吉の枷(上・中・下)
著者:加藤 廣 発行所:文藝春秋

長に本能寺から阿弥陀寺までの抜け穴の極秘命令が秀吉に下る。諸葛孔明を連想する天才軍師竹中半兵衛。36歳で没した半兵衛の遺言に従い織田家中に張り巡らされた秀吉の諜報網。誰よりも早く光秀の謀反を知り、到底知らなければ不可能な短期間の中国大返し。益々残忍性を発揮して大量殺戮にはしる覇王信長。運命の天正十年、光秀の不可解な動きに謀反の臭いを感じとった秀吉参謀の黒田官兵衛。本能寺の変までを綴った上巻。光秀の謀反を察知した秀吉は、すぐさま抜け穴を封鎖する。本能寺の焼け跡からは、信長の遺体はでない。では、抜け穴に当然あるべき信長の遺体が・・・消える。安土城に隠された膨大な武器と金塊。すばやく手に入れた秀吉は、ついに天下取りへと動き出す。清州会議、大徳寺での遺骸なき大葬儀、美濃遠征、賤ヶ岳の合戦が終わり、秀吉単独の知行地は、220万石を超え、石見や但馬生野の銀山など7ヵ所の銀山・金山を直轄領とする。弟、側近にも相当な知行地を与え、揺るぎない実力を備える。壮大な大坂城を立て、家康・信雄との小牧長久手の戦いへと。信長の遺児や嫡流を葬り、姪の茶々に触手を伸ばす秀吉は、九州平定へと動く中巻。側室となった茶々が、鶴松を生む。狂喜乱舞する秀吉。天下統一へ最後の障壁となる北条討伐に向かう。その数、空前絶後の20万人。表向きは北条征伐だが、内情は家康追放作戦。鶴松が2歳で急逝、狂った様に征明宣言を出し、渡海する日本軍。茶々が秀頼を生み、その出生の秘密を知った関白・秀次の高野山追放と切腹。泥沼の朝鮮・明との戦い、秀吉自身が、自分の子ではないと知りながら苦悩する日々と信長への懺悔。最高権力者となり、孤独を味わう秀吉の晩年を綴った下巻。

本能寺三部作

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枷(かせ)とは、鉄や木で作られ、罪人の首、手、足などにはめて、体の自由を奪うものとある。秀吉の枷とは、信長から信頼され抜け穴を作り、その信長を殺すために封鎖する。秀吉が一生背負った心の枷であると感じました。   s.s                      

信長の棺

信長の棺(上・下)
著者:加藤 廣 発行所:文藝春秋
75歳での高齢デビュー作となったこの「信長の棺」は、構想15年の大作である。小泉純一郎元総理の愛読書としても有名。
信長の一代記「信長公記」の作者である太田牛一が主人公の物語である。
柴田勝家の家臣として仕え、弓の名手としてならした太田牛一、弓の腕前を見込まれて信長の家来に引き抜かれる。鉄砲の伝来とともに、弓の名手としての戦働きの値打ちも下がり、弓より文才を信長に見出され、祐筆となる。
信長が、秀吉の援軍要請に応えるべく、出立する前日に、太田牛一に預けた5つの木箱。その4日後に本能寺にて横死する。信長の伝記を書きたいのだが、太閤秀吉に自分の伝記を書けと強要され、「大かうさまくんき」を書き上げる。七十歳となり現役引退した牛一は、信長の遺体がでない本能寺の変の謎に迫る。

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秀吉は、農民の出と言われているが、乗馬の技、築城の知識、算勘の速さは、紛れもなくおかしい。権力争いに敗れ、丹波に逃げのびた貴族の末裔で、今では陶工で山賊まがいの生活をしている集団から、抜け出した男だと断定している。

5つの木箱に入れられた大量の金の延べ棒の使い道とは、巷で言われている桶狭間の合戦とまったく違うからくりや、本能寺の抜け穴の話など、大変興味深い話へとつながっていく。 大反響の本能寺三部作の第一弾。              S.S

賤ヶ獄

賤ヶ獄(しずがたけ)
著者:岡田 秀文 発行:双葉社
信長を本能寺で討った光秀を、誰がまっ先に主殺しとして成敗するのか。中国の太守毛利氏と対峙していた秀吉、北陸では柴田勝家とその与力大名が上杉氏と戦い、関東では、滝川一益が北条氏とにらみ合い、信長三男の信孝と丹羽長秀は、四国の覇者長宗我部氏を討つべく大坂に集結していた。また同盟者の家康は、堺にてわずかの供廻りと観光中であった。
山崎の合戦で、光秀を破りし秀吉が、清州会議において主導権を発揮して、信孝を押す筆頭家老勝家を追い詰めていく。元々秀吉とそりの合わなかった一益は、織田四天王と言われながらも、清州会議にも参加できず失墜していく。そして秀吉の天下獲りは、加速してあの七本槍で有名な賤ヶ岳の合戦へと。天正十年(1582年)から天正十三年(1585年)までの三年間、覇王の後を継ぐべく武将たちの熱い戦国歴史群像。

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(余談)
光秀と縁戚関係にあった大和一国の支配者筒井順慶。大和の有力国衆筒井順昭の嫡子として生まれ、父順昭は、幾多の有力豪族たちを圧して、大和一国をほぼ手中に収めた稀代の英雄である。しかし、順昭は、順慶が三歳の時に病死。幼すぎるため順昭の喪は秘される事となった。国内に木阿弥(もくあみ)という順昭と瓜二つの人物を身代わりに仕立てて順昭の健在を装った。やがて順慶が後継ぎのできる年齢に達したので、役目を終えた木阿弥(もくあみ)は、筒井城を追われた。いったんよい状態になったものが、またもとのつまらないさまに戻る故事として「もとの木阿弥(もくあみ)」という。              s.s                                                                                                                       

わたしの旅路(ミネルヴァ書房)

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22年10月23日にミネルヴァ書房の創業者であり会長の杉田信夫様と奥様であるアイ子様のお別れ会が、

ウェスティン都ホテルで執り行われました。閉会後、ひとりずつ帰り際にいただきました亡き会長の書

かれた本です。戦後間もない昭和23年に、東京でなければ無理だと言われていた時期にあえて京都で

悪戦苦闘しながら出版を立ち上げられた時のお話。それでも日本中が活字に飢えていた時代、そんな京都

でも200社以上の出版社が生まれ、その後の10年程の間に65社程度に激減したお話。京都の出版社を何社

か紹介されているのですが、これがまた弊社とお取引のある出版社さん、また昔に名前だけ聞いたことの

ある出版社さんなど、大変興味深いお話でした。四章として、老いと取り組むと題して、デイセンター、

クリニック、ホスピスなど世界各地を廻り、つぶさに見学され、またヘルパーさんとの会話から、様々に

レポート 調に書かれておられます。30年以上も前からご自身のライフワークである高齢化社会への対応、

また人間の老いと死を真摯に捉え取り組んでおられました。イギリスのホスピスの話をひとつご紹介いた

しますと、患者が亡くなると、カテーテルが外され、周りの人から祝福を受けます。そして生前の様子を

話すこととなっています。一年に700人が亡くなります。入所2日目で亡くなる人もあり、11日目までに

50%の人が亡くなります。一年半生きる人もあります。余生を精一杯生きようとするのがこのホスピスの

目的で、残った生をできるだけ患者に長く感じさせ、安心して亡くなるようにつとめています。患者さん

たちの顔はみなやすらかで、めいった人は見かけませんでした。と書かれてあります。ホスピスの名前は、

11,2世紀から使われ、旅行者の休憩するところで、僧侶が作ったものであったそうです。人間は、生から

死への旅行者であり、ホスピスは、最後の人の病気を治す(キュア)ところではなく、お世話(ケア)する

ところであると締めくくっています。最後の5章として外国訪問のお話で終わりますが、67年のソ連訪問で

のひどい社会主義国の現状を正確に伝え、おもしろいエピソードとしては、零下20度の12月、毛皮の帽子を

かぶって外出しなければ、4月頃になって頭が痛くなりだすお話や、ベトナム戦争真っ盛りの71年の

ニューヨーク、ホテルである日本人が寝ていたら、黒人のボーイとメイドが入って来て、持ち物を全部持ち

出して行くのを、余りの怖さに狸寝入りしていて、出て行くやいなやフロントに抗議に行くと、

「あなたは黙っていたからラッキーだ、声を出していたら殺されていた。」と何の弁償もなしに受け流された

お話など、大変楽しく拝読いたしました。非売品ということですので、以上の内容に興味を持たれた方は、

弊社でお貸しいたしますので、ご連絡ください。 s.s 

小太郎の左腕

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「のぼうの城」「忍びの国」に続く和田竜待望の第三弾!
のぼうの城には及ばないが、一気読みする痛快な作品です。s.s